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コラム総集編

失った信頼を取り戻したい経営者の方へ

失った会社の信頼を取り戻す4つのステップ(現状分析・反省・計画・実行)

大口の取引先から、取引の縮小を告げられた。
品質問題やクレームへの対応を誤り、地域での評判が悪化した。
社員が立て続けに辞め、残った社員も会社を信じていないように見える。
借入の返済が滞り、銀行の担当者の表情が変わってきた。

会社が信頼を失う場面は、さまざまです。
そして中小企業の場合、経営者はその重さをほとんど一人で抱えることが少なくありません。

社内では話しにくい。同業の集まりでは、なおさら話せない。
自分で調べようとしても、あまり事例が表に出にくいこともあり、参考になる情報も多くありません。

トラスタライズ総研では、創設以来「信頼の構築・活用」を中心テーマとして、
お客様企業のご支援や、100回以上に及ぶコラムの執筆を続けてきました。
本記事は、そんな当社の知見を「失墜した信頼の再構築」という切り口でまとめた総集編となります。

失ってしまった会社の信頼を取り戻したいと考えている経営者の方に向けて、体系化した方法論を、実際の企業の事例とあわせてお届けします。

このページで扱うこと

  • 信頼を失った会社で、何が起きるか
  • 信頼を取り戻せる会社と、取り戻せない会社は何が違うのか
  • そもそも「信頼」という概念を、どのようにとらえるべきか
  • 原因の反省を、どこまで掘り下げるべきか
  • 回復への道筋を、どう数字と期限のある計画に落とすか
  • 計画の実行を、どう相手に見せ続けるか

最初から順に読んでも、今の状況に近い章から読んでも構いません。
大切なのは、一人で抱え込んだまま考え続けないことです。

INDEX

会社が信頼を失うと、何が起きるか

目の前の売上減少より、その後の連鎖が経営を蝕む

信頼喪失の本当の怖さは、目の前の売上減少だけでなく、損失が連鎖して広がっていくことにあります。

何か突発的な出来事により信頼を失った直後の会社では、複数の問題が同時に進みます。

例えば、主要な取引先が離れ、同じネットワークの他の取引先に不安が波及していきます。同時に、クレーム対応や事態の収拾に、人手と費用を取られるようになります。直接の利害関係者ではない相手への対応も含めると、その負担は想像以上に大きくなります。

そして何より、従業員の士気が下がります。顧客や社会のためになると思って働いてきた社員ほど、会社が批判される状況にショックを受けます。退職が続けば、生産性や品質にも影響が出て、そこからまた信頼を損なう悪循環に入りかねません。

これを食い止めるために、信頼喪失への対応は、適切な手を短時間で打てるかどうかがカギになることは間違いありません。

しかし、焦って手を打つ前に、確かめておくべきこともあります。
回復できた会社とできなかった会社を分けているものは何か、という点です。
この点について、次の章で詳しく見ていきます。

検討すべき問い

  • 信頼を失った影響を、売上以外の場所(社員・他の取引先・金融機関)でも把握できているか
  • 事態への対応に、誰がどれだけの時間を取られているか見えているか
  • 社員に対して、現状と会社の考えを自分の言葉で説明できているか

信頼を取り戻せる会社と、取り戻せない会社の差

分かれ目は、対策の規模ではなく反省の深さにある

信頼を取り戻せる会社と、取り戻せない会社。
この両者を分けるのは、結論から言えば対策の数や規模ではなく、原因を自分たちの経営のやり方まで掘り下げて認めることができたかどうか、ということです。

2014年、即席麺「ペヤング」を製造するまるか食品は、商品への異物混入の指摘を受けて、全商品の販売を休止しました。

再開までに要した期間は、約半年。
その間に同社は生産設備を全面的に改修し、容器や包装も異物が入りにくい形に作り替えました。
販売再開後、売上は回復し、ブランドは今も広く支持されています。

一方で、再発防止策を何度打ち出しても、問題が繰り返される会社もあります。

2000年代のリコール隠しから2016年の燃費データ不正まで、十年以上不正が繰り返された自動車会社の例は、大きく報道されました。

この差は、どこから来るのでしょうか。

信頼の失墜に限った話ではありませんが、企業再生で知られる三枝匡氏は、著書『V字回復の経営』の中で、改革の出発点として「強烈な反省論」を挙げています。

不振の原因を、景気や競合や部下のせいにしない。
自分たちの過去のやり方が招いた結果だと、当事者が骨身に沁みて認める。

この工程を飛ばした改革は、どれほど立派な計画を作っても実行の力が生まれない、という指摘です。

当社は、信頼の再構築の場面でも、同じことが言えると考えています。

「担当者のミスだった」「運が悪かった」で済ませた反省からは、その場しのぎの対策しか出てきません。
一方、取引先も、社員も、銀行も、対策の中身より先に、経営者が原因をどこまで自分のこととして捉えているかを見ています

まるか食品の半年間の休売と設備の全面改修は、原因は単に運が悪かったからではなく、仕組み自体にあると認めたからこそ出てきた対応だといえます。

検討すべき問い

  • 信頼を失った原因を、他者や外部環境のせいにしていないか
  • 自社の対策は、その場しのぎではなく仕事のやり方の見直しに踏み込んでいるか
  • 「元に戻す」だけでなく、以前より良い会社になる道筋を描いているか

失った信頼を取り戻す4つのステップ

一度失った信頼を再び取り戻すには、大きな苦労が伴います。一筋縄ではいかないことも多いでしょう。

ですが、少しでもその苦労を軽減し、早期に会社を立て直すうえでは、「現状分析⇒反省⇒計画⇒実行」の4つのステップに分けて検討・対策を行うことが有効です。

この順番には、意味があります。

何となく信頼回復を叫んでも、相手は具体的にイメージができません。
原因の反省が浅いまま計画だけを立てても、相手には響きません。
逆に、反省が深くても計画と実行に変換されなければ、相手にはその深さが伝わりません。

まず、何となく使っている「信頼」という概念を、具体的な言葉に分解する。
次に、今の事態を招いた原因を経営のやり方まで掘り下げて特定し、認める。
その反省に基づき、数字と期限のある行動計画に落とす。
そしてその計画を、実行し、進捗を相手に見せ続ける。

このプロセスを通して、失った信頼は少しずつ、取引や採用や資金調達を支える会社の資産として、積み直されていきます。それぞれ具体的に見ていきましょう。

STEP1
現状分析
失った「信頼」を、正しく冷静に見極める
STEP2
反省する
原因を、他責とせず自責として認め、痛切に反省する
STEP3
計画にする
反省から得られた示唆を、あるべき姿と行動計画に落とす
STEP4
実行し、見せ続ける
進捗の発信を、続ける仕組みにする

ステップ1. 現状分析

失った「信頼」を、正しく冷静に見極める

「信頼」という言葉は誰もが知っている便利な言葉ですが、人によって解釈に幅が出ることもある表現です。信頼という概念を1つのぼんやりした塊のまま扱うと、対策も「誠意を見せる」「行動で挽回する」といった抽象的で実効性の低いものになりがちです。

信頼の回復・再構築においてまず大切なのは、信頼を具体的な要素に切り分けて、現状を正しく分析することです。

当社では、企業の信頼は、価値を提供する「能力」と「姿勢」の2本柱に、「他者評価」と「保証・リスク低減」を加えた、4つの要素に分解して捉えることができると考えています。

こうして切り分けると、自社が失ったものが、もう少し具体的に見えてきます。

例えば、品質問題で傷つくのは、主に「能力」への信頼です。
隠蔽や不誠実な対応があったとすれば、「姿勢」への信頼が揺らいでいるはずです。

失った信頼は、失った要素と同じ領域で回復するのが原則です。
不誠実な姿勢を疑われている会社が技術力をアピールしても、相手の不信は解消されません。

そしてもう1つ、信頼回復を目指すべき相手の特定も必要です。
顧客か、取引先か、社員か、金融機関か。
直接迷惑をかけた相手はもちろんですが、そこから波及して信頼を損ねた相手も存在するはずです。
相手ごとに、失ったものも、回復のために示すべきものも違います。

頭の中に、「信頼を失った」という感覚があれば、ぜひ紙に書き出してみてください。
相手は誰か。傷ついたのは自社のどのような点への信頼か。
書き出した一つひとつが、この後の反省と対策の単位になります。

検討すべき問い

  • 失った「信頼」の中身を、具体的な言葉で説明できるか
  • 相手ごと(顧客・取引先・社員・金融機関)に、失ったものの違いを書き出したか
  • 傷ついたのは能力への信頼か、姿勢への信頼か、判断できているか

ステップ2. 反省する

原因を、他責とせず自責として認め、痛切に反省する

誰のどんな信頼を失ったかを正確に見極めた後に行うべきは、「痛切な反省」です。ある意味、最も重要なステップといっても過言ではありません。信頼を失う事態を引き起こしてしまった責任を、他責や運の悪さで片付けず、それを許した経営のありかたや仕組みによるものと認めて初めて、対策を検討するスタートラインに立てるのです。

失った信頼の実態が見えたら、次は原因の追究です。

ここで、多くの会社の反省は浅いところで止まります。

「担当者が確認を怠った」
「たまたま運が悪かった」
「取引先の要求が厳しすぎた」

どれも事実の一部ではあるかもしれません。
しかし、そこで止めてしまうと、対策は担当者への注意と、せいぜいチェックリストの追加程度で終わってしまうでしょう。

本当に信頼を取り戻そうとするならば、その先へ先へともっと掘り下げていくことが必要不可欠です。

なぜ、そのミスが起こり得る仕事のやり方になっていたのか。
なぜ、問題の兆候があったのに、誰も声を上げなかったのか。
なぜ、その状態を経営者自身が放置してきたのか。

ミスを許した仕組み。声を上げにくい社内の空気。それを生んだ経営判断。
それらを1つひとつの業務、判断などの単位で具体化をします。

一切の妥協を許さず経営者自らがここまで遡ったとき、初めて「自分たちの経営のやり方が招いた」という、前章の強烈な反省にたどり着きます。4つのステップの中で、この工程が最も苦しく、最も不十分なまま省略されやすい部分です。

そして、もう1つ大事なことがあります。

世間やメディアに向けた謝罪と、社内での本当の反省は、別の作業だということです。

対外的な説明を整えることに追われて、内側の掘り下げが手つかずのままになっている会社は少なくありません。
外向きの体裁が整っていても、内側の反省が浅ければ、時間が経ってから同じ問題が繰り返されることになります。

検討すべき問い

  • 信頼を失った原因を、自分の経営のやり方まで掘り下げて説明できるか
  • そのミスや判断を許してきた仕組み・社内の空気を、特定できたか
  • その反省を、社員の前で自分の言葉で語れるか

ステップ3. 計画にする

反省から得られた示唆を、あるべき姿と行動計画に落とす

痛切かつ強烈な反省に基づき、変えるべき点が明らかになったとしても、それだけでは信頼再構築は動き出しません。あるべき姿(ゴール)と行動計画に変換して初めて、回復・再生の意思として他者に伝わります。

深く反省ができたとしても、頭の中に描いたイメージと言葉だけでは、相手には伝わりません。
謝罪の言葉や姿勢の丁寧さもさることながら、信頼を損ねてしまった相手が知りたいのは、この会社は変わるのか、という点です。

それに答えるツールの1つが、経営計画です。

反省を踏まえて、どんな会社になるのか。
そのために、何を、いつまでに、どの水準まで実行するのか。
誰が責任を持ち、どの数字で進み具合を測るのか。

「これからは品質管理を徹底します」では足りません。
誰が読んでも実行と検証ができる粒度まで、具体化します。

たとえば、検査工程を何月までにどう変えるのか。教育を誰に、何回、どの内容で行うのか。改善の達成度を、どの指標で毎月確認するのか。

ここまで落とし込んだ計画は、社内に対しては行動の指示書になり、社外に対しては回復の意思を示す説明資料になります。逆に、計画がぼんやりしたままだと、社員は何をすればよいか分からず、相手は口だけではないかという疑いを解けません。

なお、このときの目標設定は、元の水準に戻すことだけをゴールにしない方がよい場合があります。信頼を失った会社に対して、相手は「前と同じに戻るだけでは足りない」という目で見ることがあるからです。また、社内に対しては、失った信頼を取り戻す、という強力な旗印を得ることにもなりますので、これを機に、従来であれば手を付けられなかった改革に着手するのも悪くありません。

以前より優れた会社になる道筋まで描けると、守りの経営を経て、攻めの経営への移行を促す希望の光になるでしょう。

検討すべき問い

  • 回復までの道筋は、数字と期限のある計画になっているか
  • 計画は、誰が読んでも実行と検証ができる粒度になっているか
  • その計画を、信頼を失った相手にそのまま見せられるか

ステップ4. 実行し、見せ続ける

進捗の発信を、続ける仕組みにする

現状分析、反省、計画化を経て、信頼再構築の準備は一旦整うことになります。ですが、信頼回復の道程では、一度の情報開示ではなく、実行・発信を続けているかどうかも大きなカギを握ります。

計画ができたら、あとは確実な実行です。
そして、実行と同じくらい大事なのが、進捗を相手に見せ続けることです。

危機の直後は、多くの会社が丁寧に説明します。
しかし時間を経るにつれ、その発信がおろそかになっていくことが少なくありません。

発信が止まると、相手の頭の中では「あの件はどうなったのか」という疑問が、少しずつ不信に戻っていきます。
だから、信頼再構築のプロセスにおいては、報告をする仕組みをあらかじめ作ります。
具体的には、いつ、誰が、誰に対し、何を報告するのかを決めて、それを定期的に続けるということです。

このとき、うまくいっていない部分も含めて報告することが大切です。
計画どおりに進まないことは、当然あります。
遅れそのものよりも、遅れを取り繕うことのほうが、信頼を再び壊します。

遅れた原因と、修正後の見通しを、そのまま伝える。
この誠実さを続けられるかどうかが、回復の踏ん張りどころです。

数字を交えた定期報告を重ねるうちに、相手の反応は少しずつ変わっていきます。

「また問題を起こすのではないか」という警戒が、「この会社は本気で変わろうとしている」という見方に変わっていく。

信頼の回復は、この地道な繰り返しの先にあります。

検討すべき問い

  • 改善の進捗を、定期的に報告する場や習慣があるか
  • うまくいっていないことも、取り繕わずに伝えられているか
  • 発信の頻度が、時間とともに減っていないか

信頼の回復を、一人で抱え込まないために

ここまで、信頼を取り戻すための4つのステップを見てきました。

①ぼんやりした「信頼」を、具体的な言葉に分解しながら現状を把握・分析する
②原因を他責にせず、経営のやり方まで掘り下げて認める
③あるべき姿と行動計画に落とし込む
④実行し、進捗を相手に見せ続ける

流れとしては、この順番です。

ただし、実際にやってみると、多くの経営者が同じ場所でつまずきます。
2つめの、反省の掘り下げです。

自分のことは、自分では見えにくいものです。
一人で反省すると、自分に甘くなるか、逆に必要以上に自分を責めて動けなくなるか、どちらかに偏りがちです。

そして、このテーマは社内でも相談しにくい。
役員や幹部に「私の経営のどこが原因だったと思うか」と率直に聞ける会社は、多くありません。

だからこそ、利害関係のない第三者と話すことに意味があります。
問い返されることで、反省の掘り下げどころが定まり、行動計画の粒度が上がっていきます。

当社がご支援した会社に、長年の経緯から借入が膨らみ、ややグレーともいえる処理などもあったりして、金融機関との信頼が揺らいでいた会社がありました。
社長と当社が取り組んだのは、ウルトラCのような派手な巻き返し策ではありませんでした。

月次の数字を整える。
どの仕事で稼げていて、どこに問題が残っているのかを、社長自身の言葉で説明できる状態をつくる。
改善の道筋を、期限つきの行動計画に落とす。
それを持って、金融機関への説明を定期的に続ける。

はじめのうちは苦しい取り組みでしたが、やがてこの積み重ねに対して、「こうやって会社は変わっていくんですね」という言葉を頂ける場面もありました。
信頼の回復はまだ道半ばですが、確実に会社全体が良い方向に進んでいます。

信頼を失うことは、経営者にとって最も苦しい経験の1つです。
しかし、原因を直視し、変わる道筋をかたちにして、実行し続けた会社は、以前より強くなれます。

信頼の再構築にも時間はかかりますが、誠実に取り組みを続ければ、そこにやがて新たな信頼を築くこともできます。人は誰しもミスをするものですが、そこからどのように行動するかは、人によって全く異なるからです。

信頼を失う苦しい局面を迎えながらも、誠実に向き合い、真面目に事業を営む会社が、やがて苦難を乗り越え、その先の成長を成し遂げるお手伝いをする。それが私たちの願いです。

「自社の場合、何から手をつけるべきか」を確認したい方には、無料の個別相談で状況を伺っています。
失った信頼の中身の切り分けから、原因の掘り下げ、行動計画づくりまで、どこから整えるべきかを一緒に整理します。

信頼を失った経緯には、社外に話しにくい内容が含まれることがほとんどです。お伺いした内容の秘密は、固くお守りします。一人で抱え込まず、まずは状況を言葉にするところから、始めてみませんか。

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー。
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

プロフィール