第7回  企業自身の”信頼”を構成する4つの要素

自社の信頼性を高めるために、能力・姿勢・他者評価・リスク緩和の4つを意識せよ

第6回では、「顧客が抱く期待値」の要素の1つである「顧客がその製品・サービスから得たいと考える効用の大きさ」について触れました。今回は、もう1つの要素である「顧客が思い描く効用が期待通りに提供される確度」について考えていきます。

目次

”製品・サービスの提供元”としての企業の信頼性

 個人や企業が製品・サービスを購入しようとする際、「何を買うか」はもちろん大切ですが、「誰から買うか」というのも重要な意味を持ちます。対価を支払って購入する以上、少なくともその製品やサービスがきちんと提供されることは最低限必要ですし、気持ちのよい接客や、何度も利用したときのオマケなど、それ以外の期待を持つ人も少なからずいるでしょう。

 当たり前のことですが、「この企業から買いたい」と思ってもらえるようになることは、企業が売上を伸ばしていくうえで大切です。「信頼」の観点からは、「信頼できる企業である」、「期待する価値がその通りに提供される」と潜在顧客に感じてもらうことができれば、取引成立・売り上げ拡大につながっていきます。特に、高額・失敗の許されない製品・サービスであればあるほど、期待を裏切られた時の買い手側の損失は大きくなりますから、この信頼性の部分は重要性は高まるでしょう。

 過去の事例や研究を分析した結果、自社の信頼性を高める、あるいは自社のことを知らない人にも信頼してもらえるようにするための手段は、大きく2つの柱(能力・姿勢)と2つの付帯的要素(他者評価・リスク緩和)の方向性に大別できると当社は考えています。

期待される効用を提供する”能力”と”姿勢”

 自社の信頼性を高めるための4つの方向性のうち、まず押さえるべきは自社の「能力」と「姿勢」の2つを訴求し、買い手に理解してもらうという点です。買い手側が製品・サービスの購入を決断する際、相手がそれに足る能力を備えていること(100%でなくとも一定程度の納得感をもって推定できること)は、ほぼ必須といっても過言ではありません。例えば、まともな家を建てられるかわからない出来たばかりの工務店があったとして、そこにマイホーム建築をお願いする、というのはなかなか勇気がいることです。

 逆に、仮に相手が高い能力を持っていることがわかっていたとしても、例えば、自社の利益しか考えていない・納期意識が低い・倫理的に問題がある等、「姿勢」の面で不安な点があれば、購入の意思決定を妨げる要因になりえます。先ほどのマイホームの例でいえば、顧客本位でない、近所での迷惑行為がしばしば発生する、といった懸念があれば、例え施工能力そのものが高かったとしても、信頼してお願いすることは難しそうです。

 「信頼を対価に」を実現するうえでは、この「能力」と「姿勢」の両方を見込み客に正しく伝えることを強く意識しましょう。どちらか片方の理解度が必要最低限の水準に達していなければ、もう片方がどれだけ高くとも購買に結びつけることは困難だからです。

”他者評価”と”リスク緩和”による信頼の補強

 続いて、自社の信頼性を高めるための残りの2つの方向性をみていきましょう。前述の能力と姿勢が企業の信頼性を形作る柱だとすれば、残りの2つはそれを補強する位置づけになります。

 そのうちの1つめは、他者評価を活用して自社の信頼を補強するという試みです。いわゆる口コミに代表される「実際に製品・サービスを購入した人からの評価」や、ランキング・コンペなど「第三者からの評価」に大別されます。

 今日、多くの個人・企業が、購入に際しこうした他者の評価を客観的な情報として活用していますが、それは製品・サービスを販売する側からその中身をコントロールするのは難しいと考えられているためです。ただ、こうした他者評価を好意的な方向に変えていくための戦略や施策というものも存在しますので、「能力」と「姿勢」の訴求を強化する目的で、他者評価の活用を検討する価値は大いにあるといえます。

 そして4つの方向性の最後の1つは「リスク緩和」の活用です。今述べた「他者評価」は、最初に2つの柱であると申し上げた企業の「能力」や「姿勢」の訴求にさらに説得力をもたせるための考え方でした。一方、この4つめの「リスク緩和」は、製品・サービスを購入後、買い手が当初期待していた効用が得られなかった際の損失を軽減する処置を予め織り込むことで、購買行動における買い手側の確度を高める、という施策です。

 代表的なのは「返金保証制度」で、満足できなかった場合に返金されることが約束されていれば、購入に際し相手の能力や姿勢の面で多少の不安があったとしても、それを補う要素になりえます。但し、「返金保証制度」自体が実行されない懸念は存在しうるため、企業自体の信頼も一定程度必要になるでしょう。この意味で、「リスク緩和」の施策は、信頼性の訴求のうえでは補助的な位置づけとなります。

「信頼を対価に変える」全体像

 第5回以降、「信頼」によって対価を得るための着眼点、特に対価を支払う対象としての「顧客が抱く期待値」についてみてきました。一旦ここまでの議論を整理したのが下図であり、対価を得る、という概念を「信頼」の観点から因数分解した形になります。

 ここでぜひご理解頂きたいのは、信頼から対価を得ようとするときに、何か特定の取り組みや流行の施策を実施するだけでは効果は限定的であるという点です。ここに示すような対価獲得の全体像を紐解き、自社の実態を明らかにしたうえで、必要な施策を厳選し、相互に連携させながらタイムリーに実施していくという戦略的な取り組みが大切なのです。当社ではこの取り組みやそれによって起こる変化を「トラスタライズ」と呼び、中小企業がその信頼を対価に変えていくための研究・ご支援を続けていきます。

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