第3回 ケーススタディ:「信頼」による対価獲得② -サービスの信頼性の活用

形のないサービスだからこそ、”信頼”を活用した差別化の仕組みを構築せよ

 ケーススタディの2例目として、今回はサービス業に携わる企業を取り上げ、「信頼」を戦略的に活用し、対価を得ることに成功した事例をご紹介します。目に見えないものを提供するサービス業においても、その信頼性を可視化・証明して訴求するアプローチは非常に有効です。
(注:以下のケーススタディは実際の事例に基づいていますが、公開コラム用に簡略化しています)

目次

価値を具現化する前に信頼・対価獲得が求められるサービス業

 今回取り上げる企業は、東海地方で小学校受験から大学受験まで幅広い指導を手掛ける、地域密着型のT学習塾です。T学習塾は、1人ひとりに合ったカリキュラムを幼少期から一貫して提供できる点を強みとし、英会話やそろばんなど、受験指導のみならず幅広いメニューを提供しながら、半世紀近くにわたり地域の子供たちを指導してきました。その結果、かつての塾生が親になり子供を通わせるようになるなど、地域においては一定の信頼と実績を有していました。

 しかし、T学習塾が事業拡大のために他県への展開を試みた際には、どうしても大手や地域の塾と比べ知名度・実績で劣る部分があり、苦戦を余儀なくされました。保護者にとって学習塾選びは、前回取り上げた住宅ほど大きな金銭的出費を伴うものではないものの、子供の将来を左右しかねないという意味ではできる限り失敗を避けたい出費のひとつです。そんななかで、他県での実績が豊富なT学習塾といえど、それが通用しない場所においては塾生確保が難しくなるのは想像に難くなく、それでも進出しようとするならば競合他社よりも価格を下げざるを得ない、という状況でした。実績のない場所でいかに「信頼」を得るか、というのがT学習塾に突き付けられた課題だったのです。

目に見えないものを提供するサービス業において信頼性を可視化・証明して訴求するアプローチが有効

目に見えない「信頼」をいかに可視化するか

 この苦しい状況において、T学習塾は、自社のシステム・カリキュラムが持つ「信頼」を、馴染みのない人に対してもはっきりと示し、その価値を理解してもらうという道を選びました。具体的な施策の1つとして、90日以内に成績が上がらない、または指導に満足できないということがあれば授業料の全額を返金するという、返金保証制度を打ち出しました。こうした返金保証制度は、製品・サービス業を問わずよく見られるものではありますが、競合他社で導入しているところは存在しなかったため、T学習塾の自信・信頼性を示すうえで一定の効果がありました。

 しかし学習塾の場合、例え全額返金保証があったとしても、先ほども述べたように保護者には失敗そのものを避けたい、という気持ちも強く働くことから、それだけで信頼して任せよう、ということにはなりません。やはり、教育効果の高さ、すなわちT学習塾が提供する教育サービスの質の高さを伝えることがどうしても必要でした。そんななかでT学習塾が行ったもうひとつの施策は、自社サービスの品質を確実に担保するためのプロセスを整備し、それをわかりやすく保護者に説明する、ということでした。

 具体的には、「教育効果」という抽象的な概念を、到達目標への進捗率、偏差値上昇度合い、といった定量的な指標として、保護者目線で定義し直し、その指標の達成度合いを定期的にモニタリングして改善につなげる、というプロセスを確立しました。さらに、そのプロセスによって得られた実際の数値を、教育の質・講師の質として、保護者との商談の際にも思い切って示すことを選択しました。

 このようにして測定された指標はすべて満点ということは無く、現状足りているところ・足りていないところの両方を見せる形になります。しかし結果的には、その透明性にこだわる姿勢や、時系列でみれば改善傾向にあることも同時に示すことに繋がり、入塾に繋がるケースが増加しました。教育という、受け手にとって重要だけれども形の見えにくいサービスの、効果・期待値を仕組みを用いて担保し、真摯に伝達することで、受注増につなげたのです。

形の見えないサービスこそ、「信頼」の可視化・訴求の仕組みを構築すべき

 形ある商品を販売する場合と異なり、サービス業、特に顧客が絶対に失敗したくないと考える性質の事業においては、手間をかけてでも「信頼」を可視化・証明する仕組みを構築し、その信頼性をできるだけオープンな形で訴求すべきです。ひとたびその仕組みが構築できれば、回数をこなすにつれ実績が積み重なっていき、訴求効果もより大きくなっていきます。

 このようにして蓄積された「信頼」は、受注・単価増を実現するための大きな武器となりえます。そのためのプロセス構築・訴求には、多くの場合一定のコストがかかります。また、特にサービス業の場合は、自社がどのような「信頼」をどのように訴求していくのかを、実際にサービスを行う現場の人々が正しく理解・実践することも極めて重要です。「信頼」の訴求のためには、仕組み化・社内教育といった準備が必要にはなりますが、正しく実行できればその効果は準備にかかる工数・費用を大きく上回るものになります。

 当社では、この一連の検討・準備を、「トラスタライズ・コンサルティング」として、全8回のパッケージのなかでご支援していきます。ご興味のある経営者様は是非、当社主催のセミナーへのご参加または個別相談をご検討ください。

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