第73回 まじめな会社は「経営計画」と「信頼」で飛躍できる仕組みをつくろう!

「うちは従業員みんなでまじめにやってるんですが、なかなかね…」
これは、ある社長から相談を受けたときの言葉です。創業20年、従業員15名。品質にこだわり、お客様には誠実に対応し、社員も大切にしている。けれど、思うように業績が伸びない。
「まじめにやっているのに、なぜ報われないのか?」
それは、そのまじめさが評価につながっていないばかりか、コストになっているからです。
誠実さが「コスト」になっている現実
私が中小企業をご支援するなかで最ももどかしく感じるのが、この現実です。真面目に取り組んでいる会社ほど、「割に合わない状況」に陥っていることがあります。
なぜでしょうか?
- 品質にこだわりすぎて、適正価格を提示できない
- 人や環境にやさしい製品を提供しているのに、それが評価されない
- 社員を大切にしているのに、それが競争力として表れてこない
ある意味で、誠実さが「コストになっている」のです。
もちろん、独りよがりのオーバースペックではいけないのですが、
誠実に取り組む会社こそ、本来もっと評価され、報われてほしい。
その道筋を整えることこそ、「まじめな会社」にまずは取り組んでいただきたいと思います。
なぜ誠実さが対価に変わらないのか?
「まじめな会社」は、その強みをあまり多く語らないことを美徳と考えているケースがあります。例えば、ある会社のケースでは、
- 品質不良率 0.1%(業界平均0.6%)
- クレーム 月 1 件未満
- 有給取得率 90%以上
本来なら胸を張れる実績です。ところが社長は「当たり前のこと」と考え、外に伝えていませんでした。つまり、誠実な取り組みの「価値」を自分で認識できていなかったのです。このような状態ですと、その価値に見合った対価を獲得することは難しく、逆にコストとして経営を圧迫することにもなりかねません。
この会社に対しまず一緒に取り組んだのは、以下のような整理でした。
- 「売れる理由」の棚卸し
お客様はなぜこの会社を選ぶのか? 他社ではなく、この会社にお金を払う理由を明確にする。 - 「成長ドライバー」の特定
その売れる理由を支えている取り組み・強みは何か? 背景にある仕組みや努力を具体的に特定する。 - 「社会価値」の可視化
その強みによって、世の中や業界はどう良くなっているか? 本業を通じての社会全体への貢献を明確にする。
このプロセスを通じて、この会社はなんとなく「当たり前」と思っていたことの意味を再定義しました。
- お客様が選ぶ理由:
「品質が安定していることが、不良によるコストを結果的に大きく抑制することにつながる」⇒価格を安くすることは実はそこまで大きな価値ではない - それを支える強み:
品質不良率0.1%を実現する徹底した品質管理体制 - 社会価値:
安定品質の商品・サービス ⇒利用者や消費者に「安心」を提供
こうして整理することで、自社の誠実さを、「価格競争ではなく価値で選ばれる理由」として具体化することができたのです。多くの取引先に対しても類似のことが訴求できる状況にあったため、採算性の悪化していた先に対し、価格交渉を実施することにつながりました。
全社で回すための「経営計画」と「仕組み」
ただし、この整理を一過性の改善にとどまらせてしまってはあまり意味がありません。営業、製造、管理……すべての部門が同じ認識を持ち、日々の活動に落とし込み、恒久的な自社の強みとして強化し続けていく必要があります。
そこで活きてくるのが「経営計画」と「仕組み」です。
経営計画についてはそのメリット・デメリットが色々なところで語られますが、その本質は単なる数字合わせではありません。会社の誠実さを明確な価値として定義しなおし、それを仕組みで持続的に生み出していくこと。これこそが計画の要なのです。
- どの売れる理由をどう強化するか
- その理由を支える取り組みを誰がどう管理するか
- その価値をどのようにお客様へ訴求するか
これらを計画と仕組みに落とし込むことで、一過性ではなく、継続的に「対価」に変える仕組ことができます。
あなたの会社にも、きっと「対価に変えられる誠実な取り組み」があるはずです。まずは次の問いをご自身に投げかけてみてください。
- 【質問1】お客様はなぜ御社を選んでいるのか?
- 【質問2】その理由を支えている強みは何か?
- 【質問3】お客様への価値や強みを磨き続けると、社会にどんな貢献が生まれるか?
この3つに答えるだけでも、自社の「誠実さ」がどのように価値に変わるのか、その輪郭が見えてきます。

まじめに取り組んできた会社が、適正な対価を受け取れずに苦しむのは不条理ですし、こうしたまじめな会社が飛躍してこそ、次の時代の社会がより豊かになるはずです。だからこそ、当社は、信頼を対価に変える手法をつくることに強い使命感を持って挑戦しています。
誠実さを「明確な価値」として定義し、それを仕組みで持続的に生み出していく。
その道筋を整えることが、まじめな会社が次のステージに飛躍するための第一歩なのです。


著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
社外経営企画室長・経営企画パートナー。
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
社外経営企画室長・経営企画パートナー。
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