第75回 本当に意味のある“信頼経営”を実践するには?

本当に意味のある信頼経営を実践するには

自社の文脈で定義し、仕組みで積み上げ、経営者が意思として語り続けてこそ“信頼経営”は実現できます。

「ウチは信頼を何よりも大切にしているんです」

そう語る経営者は少なくありません。むしろ、どうでもよいと公言する経営者はごくわずかでしょう。しかし、その”信頼”という言葉を掲げるだけでは現場の行動や数字の成果にはつながりません。”信頼”は多くの人から共感を集めやすく、便利な言葉ではありますが、抽象的なままでは、周囲の人の判断や日々の行動に落とし込めないのです。

では、どうすれば本当に大切な概念として機能していくようになるのでしょうか。
次の3つの段階を踏むことが、その答えになりえます。

目次

信頼を自社の文脈で定義する

第1歩目は、「自社にとっての信頼とは何か」をはっきり定義することです。自社の製品・サービスが「売れる理由」を明確化することが、その答えの中核になることが多いです。

たとえばレストランの例を考えてみましょう。ある店では「子どもに安心して食べさせられること」が、「売れる理由=顧客からの期待=自社が担保すべき信頼」の姿になるかもしれません。あるいは、「記念日にふさわしい特別な時間を提供できること」が信頼の軸となる店も存在するでしょう。

クリーニング店でも同じです。高級ブランド品を安心して任せられることを信頼とする店もあれば、早さや価格を重視し「明日までに仕上げてくれるから助かる」という信頼を軸にする店もあります。

どちらが正しいというわけではなく、ターゲットとする顧客層や競合の有無によって、自社が打ち出すべき価値は変わります。その価値を提供してくれることを顧客は期待しているわけですから、それを裏切らず、期待通り、あるいは期待以上に顧客を満たすことが信頼につながるわけです。

このように、同じ業種でも信頼の定義は一様ではありません。だからこそ、自社の顧客と向き合い、「何を約束すれば選ばれ続けるのか」を言葉にすることが、まずは自社が構築すべき信頼を明らかにするという意味で、信頼活用の出発点となります。

信頼を仕組みとして積み上げる

次に必要となるのは、その信頼を日々の業務を通じて、「目に見える形で積み上げる」ことですです。

「うちは真面目にやっている」「品質には自信がある」。そう口で言うだけなら誰でもできます。大切なのは、その約束をどうやって可視化し、証明し、再現可能にするかです。多くの場合、仕組化することで、半ば自動的に蓄積される形にすることが有効になります。

レストランであれば、仕入れや衛生管理のルールを明文化し、スタッフ全員が同じ水準で実行する仕組みを持つこと。クリーニング店であれば、仕上がりを顧客と一緒に確認する、万一の不備には再仕上げを保証するなど、安心を形にして積み重ねる工夫が考えられます。また、満たすべき自社の信頼が具体的に定義・周知されていれば、従業員の側からそれに沿った提案が出やすくなることも、仕組みの構築と実行にとっては有効に働きます。

こうした取り組みが日々なされることで、信頼は一過性の評価ではなく、繰り返し再現される資産に変わります。そしてその資産こそが、売上や利益の基盤となり、対価をもたらすのです。

経営者の意思として語り続ける

そして最後に、その信頼を積み重ねることを経営者自身が「会社の存在意義」として語れるかどうかが問われます。

「私たちはお客様に〇〇を届けることで、この地域に必要とされる存在であり続ける」。
このような言葉を経営者が本気で語り、行動で示すとき、従業員も自然と同じ軸を共有します。結果として社内の文化となり、顧客や地域社会にまで広がっていく。信頼が社会に伝播し、会社の成長と地域の発展が同時に進むのです。

そして何より大事なのが、この信頼が「売れる理由」と紐づいたものであること。信頼を追求する結果、実際の売上や利益の増加にもつながっていく。この連動性・一貫性を確保することが、信頼を中核とした経営を実現する上での要諦です。

抽象的なスローガンではなく、顧客にとって具体的な価値を感じられるもの。
可視化され、証明される仕組みによって積み重ねられるもの。
そして経営者自身が誇りを持って語り続けるもの。

この三つがそろったときに、”信頼”は経営の軸として本当の意味で力を持ちはじめます。それが“信頼経営”を実践・成果につなげることにつながるのです。

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著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

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トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
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価 格:¥2,200 (税込)
発売元:日本コンサルティング推進機構


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