第90回 信頼を受注増に変える「入口」と「出口」の設計 ~信頼を受注増につなげる回路①~

信頼を受注増に変える「入口」と「出口」の設計 ~信頼を受注増につなげる回路①~

「すごく良い取り組みをしている」と言われるが受注には結びつかない・・・

前回(第89回)のコラムでは、そんなよくある現実と、それを実利につなげるための6つの回路について取り上げました。今回からは、積み上げた信頼を実際に実利に変換するための、より具体的な手法について取り上げていきます。

今回は、信頼を効率的・効果的に受注増につなげるための具体的な方策について、さらに掘り下げてみましょう。

目次

まず「候補に入り」、次に「比較で勝つ」

受注というと、つい競合他社との比較で勝つ、という話になりがちです。よほどユニークなものでない限り、価格、納期、品質など、常に何らかの比較にさらされます。

しかし実際には、その比較表が作られる前に、見込み客のなかでは候補が絞られています。

  • そもそも声がかからない
  • 相見積の候補に入らない
  • 「一回聞いてみよう」が起きない
  • 紹介されない(=紹介者が紹介するのを思いとどまる)

このような場合には、受注件数をどう増やすかというより、まずは「呼ばれる回数」をどう増やすべきかを考えるべきでしょう。案件の入口として、「この会社にも聞いてみよう」と思ってもらえるかがカギになります。

この「入口」においては、主に以下のような点を満たすことが必要です。

  • 発注の条件を満たしているか(足切りされないか)
  • 調べる・比較する手間が小さいか(情報を低コストで伝えられるか)
  • 紹介しても、紹介者の信用が傷つかないか

もし仮に、あなたの会社がこの入口を通過し、価格や品質などの水準に一定の納得を得られたとしましょう。それでも残念ながら、すぐに受注とはなりません。顧客側では、「本当にこの会社に発注できるか」というチェックが働きます。大きな会社であれば社内の稟議がはじまり、結果的に品質や価格など本質的と思われるもの以外の要因で、受注を逃すということもあります。

出口において「安心して発注できる」という顧客の心理状態を作ることが、本当の意味で「他社との比較に勝つ」ということになります。

信頼を受注増につなげる施策群

受注というプロセスを、上記の「入口と出口」に細分化していくと、漠然と語られがちな「信頼」を、どうすれば受注増につなげられるのかが見えてきます。今回は、多くの会社で該当する可能性がある5つのパターンをご紹介しましょう。

いずれの施策も、業界やビジネスモデル、会社の状態によって有効かどうかは変わってきますが、信頼構築をさらにその先の成果につなげるために、ぜひ一度可能性を検討してみて頂きたい考え方となります。

まずは、入口側から見ていきましょう。

【入口側】発注先候補として選ばれるための3つの視点

1) 想起:思い出される/まず声がかかる

「信頼される会社になる」は、それだけで受注につなげるにはやや抽象的過ぎますが、そこから一方踏み込んで、「〇〇の時に思い出される会社になる」というような取り組みをすれば、受注の入口を拡げることにつながります。

  • 例①:水まわりのメンテナンスの会社なら
    「水のトラブルが発生したとき、最初に相談される会社」になることが受注の可能性を大きく高めます。すぐに思い出してもらえるよう、会社と連絡先のかかれたマグネットを配布するのはその典型です。トラブル発生時には比較している時間は通常ありませんから、新規顧客にすぐに思い出してもらえることを重視し、受注時に丁寧な作業を行うことで信頼を得られれば、リピートしてもらえるケースも多いでしょう。
  • 例②:BtoC高額サービス(リフォーム・教育・医療など)なら
    「迷いが生まれた瞬間に、名前が浮かぶ会社」になりたいところです。こうした領域は、単純なスペックや価格だけでは良し悪しを断定しにくく、失敗したときの後悔も大きい。そんなとき、以前の接点で、押し売りではなく判断材料をくれた、誇張せずに限界まで説明してくれた、断る余地を残してくれた——そういう信頼の痕跡を残せていれば、引き続き声がかかる可能性は高まります。

2)伝達:紹介で摩擦なく伝わる

紹介は、良い会社だから起きる、というのは前提ではありますが、紹介者が(少なくともある程度は)安全・安心だと思えるときに起きる、というのも見逃せないポイントです。紹介を増やして受注の入口を拡大するには、紹介者の不安を解決することが有効です。

  • 例③:士業・コンサル・制作会社なら
    「紹介キット」を用意するのが有効です。例えば、200字の文章(メール転送用)/1分のセリフ(口頭用)の紹介文を持っておいて、紹介者が手間をかけず紹介しやすくします。
  • 例④:地域工務店・サービス業なら
    「得意な案件」と「進め方の前提」を一文で言えるようにする(例:予算帯の目安/工期感/変更の扱い/優先順位)と、「紹介したはいいがミスマッチ」となるリスクを減らすことができ、紹介者が動きやすくなります。

3) 要件:候補に入る条件を満たす

「条件を満たせない」ことで商談に参加できないリスクを減らすという考え方もあります。「信頼」全般というよりは、サステナビリティの議論におけるトレーサビリティなど、世間一般で一定の要件が確立されている概念の場合に適用しやすいでしょう。

  • 例⑤:製造・物流・施工・食品企業なら
    サプライチェーン全体として、取引時に明示されるべき項目が確立されているケースがあります。例えば、脱炭素目線でのCO2排出量や算定方法、環境破壊・人権侵害への関与を防ぐためのトレーサビリティの明示などです。これらが必要とされる場合には、少なくとも自社の充足レベルを把握できていなければ、そもそも商談に参加すること自体ができなくなります。
  • 例⑥:製品ごとの貢献が求められる企業なら
    例⑤と似ていますが、会社として優れた取り組みをしていたとしても、製品ごとの貢献の度合いが明確化できていなければ、商談に参加できない、または評価が下がるケースがあります。例えば、脱炭素領域で、全社としてCO2を削減できていたとしても、製品別の貢献を可視化できていないため、納入先への貢献を数値化できない場合などです。サプライチェーン中流・上流の企業においても、実際の製品別の貢献を明らかにすることが、受注の間口を広げる手立てになりえます。

続いて、出口側の2つの視点についても見ていきましょう。

【出口側】比較で勝つための2つの視点

4) 明確化:信頼レベルを尺度にする

何となく信頼できそうな雰囲気はあっても、具体的な比較につながらなければふるい落とされてしまうかもしれません。信頼の度合いを尺度で表現し、わかりやすく伝達することで、自社製品・サービスの安心感を明示し、比較軸の一つに加えましょう。

  • 例⑦:建設・現場系なら
    事故ゼロ宣言だけでなく、初動を数値で定義(誰が/何時間以内/どこまで)を是正の流れとともに説明することで、「非常時の困難度合い」が比較できるようになり、開示できない他社に対して優位性を作ることができます。
  • 例⑧:BtoC高額サービス(医療・教育・リフォームなど)なら
    「補償責任(どこまで守ってくれるか)」を、具体的な数値も交え明確にする(例:保証=期間/無償範囲/免責/負担割合、再対応=期限/回数、返金条件の有無)ことにより、「安心の度合い」が比較表に乗り、信頼を尺度化することができます。

5) 説明:買い手内部の説明材料に変換する

ある意味、「信頼」が最も大きな効果を発揮しうる場面かもしれません。交渉相手と意思決定者が異なる場合に、その意思決定者を社内で説得するための材料として「信頼」は大きなテコとなりえます。

  • 例⑨:法人営業なら
    後々トラブルにつながる相手先を選んでしまうことは、相手側の窓口担当者にとっては大きなリスクです。信頼できる自社を選んでもらうことが、その担当者にとっても有効であることをわかって頂きつつ、社内で説明するための材料も用意してあげると、相手社内に味方をつくることにつながります。例えば、なぜ自社に発注すると結果的に期待値が高まるか、といった要素を含めた稟議書のサンプルを用意する、といった具合です。
  • 例⑩:家族決裁が絡むBtoCなら
    BtoCの場合も、特に高額な製品・サービスであれば「家族で相談してから・・・」というケースが発生します。自社が信頼できる理由(高価格の理由や、不具合時の対応の安心感、断りやすさなど)を具体化しておき、場合によっては紙などで渡すと、反対があった場合もうまく解決され、購入の意思決定をしてくれるかもしれません。
回路①:受注増 信頼を実利に変える5つの使い方

いかがだったでしょうか。「善い行いを心掛ける」ぐらいの解像度で漠然と信頼を積み重ねるだけでは受注増にはつながりにくいのは確かですが、一歩踏み込んで具体化し、受注増の回路を拡げてあげることで、受注・実利を増やす道が開かれます。

逆に言えば、信頼を使える形に変換できれば、それができていない他社に比べて有効な差別化の武器をつくることができます。ぜひ、自社の信頼をもう一段階具体化して、受注増につなげていただければと思います。

メルマガ登録はこちら!

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

最新刊
企業の信頼を対価に変えて収益性を大きく高める「トラスタライズ」5大ポイント

自社が大切にしてきた「信頼」や、潜在的な無形の価値を、どうすれば大きな対価に変えて収益をあげていくことができるか…。
信頼を対価に変える独自メソッド「トラスタライズ」の手法で企業のこれまでになかった収益の上げ方を提示する専門家が、その具体的なポイントを社長の視点で解説した実用書。

目次
ポイント1:「対価に変えられる信頼」の見つけ方
ポイント2:信頼を効率的に対価に変える戦略の描き方
ポイント3:信頼を可視化・証明する仕組みの作り方
ポイント4:信頼から確実に対価を得るための訴求のやり方
ポイント5:信頼活用に向けた社内の意識改革のやり方

価 格:¥2,200 (税込)
発売元:日本コンサルティング推進機構


セミナー情報はこちら

信頼を対価に変えるトラスタライズ・セミナー
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次