第54回 信頼を軸とした経営で2025年を飛躍の年に
新たな課題と機会が交錯する2025年にさらなる成長を実現し、飛躍の年とするために、信頼を基盤とした経営を展開することがひとつの解となりえます。
新年、明けましておめでとうございます。
昨年は多くの企業様からご支援の機会をいただき、心より感謝申し上げます。経営環境が目まぐるしく変化する中で、中小企業が持続的に成長を遂げるための「信頼を基盤とした経営」の重要性を改めて実感する1年となりました。
2025年は、中小企業にとって重要な変化が多方面から訪れる年です。既に現時点でも、国際情勢の不透明感の拡大、生成AIのさらなる進化、そして人手不足やコスト高といった課題が浮き彫りになってきている中で、どのようにして成長の機会を獲得していくかが問われています。
本コラムでは今年も、中小企業の成長につながる「信頼」の蓄積の仕方、そしてその活用方法を取り上げていきます。その初回となる今回は、この2025年という新しい年に、企業がさらなる飛躍を遂げるためのアプローチを、3つの重要な変化を取り上げながら考えていきます。
国際情勢の変動と信頼の可視化
2024年は、終わりの見えないウクライナ情勢、中東での紛争拡大など、経営における地政学的リスクがより高まった1年となりました。2025年にはアメリカの政権交代が行われることもあり、国際情勢はさらに混迷を深めていくことが懸念されます。
特に、国際的なサプライチェーンに依存する中小企業は影響を受けやすい状況にあり、2025年中に大きく好転する可能性は低いでしょう。こうしたなかで、自社の信頼を的確に可視化・訴求することは、変化への耐性を高める手段となりえます。
例えば、透明性の向上による信頼性の訴求やリスク共有は、予見しえなかった変化が生じた際の影響を抑制するうえで効果的です。例えば、BtoBの取引において、自社の調達・供給体制の透明性を予め取引先や顧客に示すことは、それ自体が信頼につながります。さらには、自社の努力でカバーできる範囲を超えた事態が発生した際も、予め共有・納得していた内容をベースに説明を行えるため、理解が得られやすくなります。
もちろん、複数の仕入れ先を確保するなど、自社のリスク耐性自体を高める取り組みも大切です。例えば、中東の資源に依存していた化学製品メーカーが、北米や東南アジアからの調達ルートを確保し、さらにその体制を取引先に明確に説明することで、「地政学的リスクに対応できる企業」として新規契約の獲得につなげる、といった具合です。
こうした努力によって「想定しうるどんな場面でも柔軟に対応してくれる企業」としての信頼を築くことができれば、混迷する環境を自社への追い風にすることができます。
生成AIの進化と信頼を活用した顧客体験の革新
2024年には、Chat GPTに代表される生成AIのビジネスへの活用・普及がさらに進みました。日進月歩の勢いで進化する生成AIは、2025年にさらに高度化することはほぼ間違いありません。AIの活用は、業務の効率化にとどまらず、顧客との関係性強化の手段としても注目されており、企業が「顧客との信頼をどう育むか」を考える中で、これまでになかった形でのチャンスを提供します。
顧客との接点そのものをAI化することには、人間味ある対応ができなくなる、といった意見もあるため賛否両論が存在するでしょう。ただ、顧客との接点は引き続き人が担うという場合にも、顧客への価値提供やサポートを強化する上では、生成AIは非常に有用な武器になります。
その視点のひとつが、顧客とのコミュニケーションにおける一貫性の強化です。問い合わせやトラブル対応に際し、AIを活用することで回答のスピードと精度を向上させることで、「いつでも的確に対応してくれる」という印象を顧客に与えることができるため、それが自社の価値提供の期待値を高める形での信頼強化をもたらします。経験の浅い人でも、AIにより一定以上の業務品質を担保することができれば、中長期的に見た企業の競争力強化にもつながるでしょう。
他にも、顧客の過去の注文履歴と市場動向を生成AIで分析し、次回購入を提案することで、年間売上げを向上させるなど、導入の余地はさらに広がっていくことが見込まれます。業務の効率化だけでなく、顧客への提案・対応力の強化の面でも、2025年はより多くの新たな選択肢が生まれてくるでしょう。
サステナビリティの文脈で信頼を未来の投資に変える
2025年は、SDGsの目標年である2030年に向けた節目の年でもあります。日本においても、ゴールによって既に達成されたもの、当初の予定より大きく遅れているものなどが混在していますが、目標年の5年前ということで、その進捗と残り期間での取り組みに焦点が当たるはずです。
同じく、脱炭素に限った文脈でも、社会的な取組の強化や中小企業への要請の高まりが進むと考えられます。多くの大企業が2030年に温室効果ガスの削減目標を掲げ、サプライチェーン全体を巻き込んだ削減活動を進めています。残り5年となる2025年には、脱炭素に向けた具体的な行動、少なくとも計画の提示ぐらいのレベルでは、未着手の中小企業にも要請が強まる可能性があります。
前述の国際情勢の不安定化により、こうしたサステナビリティ自体の動向を疑問視する見方もあります。しかし筆者としては、スピードの変化は起こり得るものの、世界がサステナビリティ重視の方向で進んでいくという大きな流れ自体は変わらないと考えています。その理由は、地球全体としての将来の懸念は依然として残り続けることに加え、過去にも不安定な時期はありながら、トータルで見ればサステナビリティの諸問題を緩和・改善する方向で進んできているからです。
この立場に立てば、長期的には環境や社会に配慮した製品・サービスの価値も高まっていくと考えられます。そのような製品やサービスの開発を、粘り強く進めておき、それを信頼構築の柱とする。その際、世界や日本全体のため、という旗印が受け入れられなければ、まずは地域に貢献、というように、「買い手にとって身近に感じられる貢献」を考慮した展開とすることも効果的です。
さらに、環境・社会への貢献を掲げ、具体的な行動を進めることは、従業員の採用や定着に効果が出始めています(第44回コラム参照)。社会全体の意識が高まりそうな2025年のこのタイミングで種まきを始めておくのもよいでしょう。
2025年は、国際情勢の変化や生成AIの進化、そして持続可能性への要請といった、課題と機会が交錯する年です。この複雑な環境下で、信頼を基盤に据えた戦略を展開することは、中小企業が成長を実現する鍵になりえます。
当社トラスタライズ総研も、お客様である中小企業の信頼構築・活用を支援し、変化の中で持続可能な成長を共に実現するために、今年も知見の構築と提供を進めていきます。この激動の年を共に乗り越え、飛躍の年としましょう!
著者プロフィール
トラスタライズ=信頼を対価に変えるコンサルタント
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
企業の「信頼を対価に変える」専門コンサルタント。
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、「信頼」を切り口に、顧客企業が売上・利益を向上させられる手法の研究・提言を行っている。
著者プロフィール
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代表取締役 池尻直人
企業の「信頼を対価に変える」専門コンサルタント。
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価 格:¥2,200 (税込)
発売元:日本コンサルティング推進機構