第31回 「価値の可視化」で販売時の信頼性を高める

自社の提供価値を買い手の立場で「可視化」できれば、成約の決め手になる

自社の製品・サービスが提供する価値を、買い手の立場・目線に立って可視化(=具体化・定量化)することで、有力な訴求材料を増やすことができます。

当コラムでは、対価とは「買い手が抱く価値の期待値」であるとの考え方のもと、企業が培ってきた”信頼”を活かしてその期待値を高め、より多くの対価を得るための施策について考察しています。

今回は、自社が創造する価値をわかりやすい形で伝えることで、買い手の期待値を高める手法についてご紹介します。

目次

価値を可視化し、購買時の信頼感を高める

 買い手が何か製品やサービスを購入しようとするとき、多くの場合、それを得ることでのメリットと、代わりに支払う対価とを天秤にかけます。メリットが対価を上回るのであれば購入に踏み切りますし、そうでなければ踏みとどまることになります。

 とはいえ、買い手の側がそのメリットを常に正しくイメージできているかというとそんなことはありません。過去に購入・利用したことがある、という場合を除けば、製品・サービスの情報が足りない状態で購入の判断をせざるを得ないこともあるでしょう。そのような場合、本来その製品・サービスが備えているメリットが買い手に過小評価され購買に至らなかったというケースや、逆に過大評価されたがゆえに、購入はしてもらえたものの利用後の満足度が著しく低くなってしまったというケースも起こりえます。

 こうしたミスマッチは、実体を持たないサービスを販売・提供する場合に特に発生しやすくなります。これを防ぐには、買い手にとってのメリットを予め可視化・伝達しておき、価値が提供されることに対する信頼感を高めてもらうことが有効です。

価値の可視化に際しては、できるだけ数値化・指標化を目指す

 価値を可視化するための基本的な考え方は、提供する価値を可能な限り具体的・客観的に表現することです。定性的な表現であっても、見込み客がイメージしやすく誤解のない表現であれば、一定の効果を持ちえます。

 しかし、価値提供の実績を訴求したり、社内の業務・改善の目標として活用する上では、何らかの定量的な指標に置き換える方が望ましいといえます。このとき、提供価値の全てを表現するとなると、ぴたりと当てはまる指標を見つけることが難しい場合も少なくありません。価値の一部だけを捉えた指標であってもまずは構わないので、代表的なものをいくつか(自社で管理が可能な数として、最初は2~3つ程度を推奨しています)設定してみるとよいでしょう。

 また、価値を可視化するという観点でもう一つ留意すべきは、買い手個人がその製品・サービスを利用した場合にどのような恩恵を受けられるか、どのような状態になれるかを示すという点です。

 前述した指標の積み上げは、あくまで自社の「お客様全体」に提供した価値の総体でしかありません。これはこれで有用なのですが、やはり買い手としては「自分自身」にとってどのような価値があるのかを知りたいと思うものですし、これを納得感ある形で事前に提示できれば、購買に際しての信頼性が高まります。

サービス業における「価値の可視化」の例

 もう少し具体的にみてみましょう。過去に当社のコンサルティングを受けられた、サービス業(パーソナルトレーニング)のT社の例です。

 T社では、「普段あまり運動しないが生活習慣の改善やダイエットに取り組みたい」という人をターゲットに、日々のトレーニングや食生活の改善をサポートするというサービスを手掛けていました。いわゆるコーチング型の、トレーナーが親身になって寄り添い、伴走(時には叱咤)しながら目標達成を目指すタイプのトレーニングジムです。

 同様のサービスを行っている他社も周囲に存在しているなかで、さらに業績を拡大させていくためのご相談を当社に頂きました。その際に実施した施策のひとつが、前述の「価値の可視化」です。

 トレーニングジムに限らず、サービス業はいかに優れた内容であっても、その価値を伝えにくいという性質があります。既存顧客に口コミをお願いするなどの施策も行っていましたが、見込み客その人に対しての有効性をもっと訴求できれば、さらなる顧客獲得につなげられると当社は考えました。

 そこで、価値の可視化の手段として、簡易診断レポートの仕組みを取り入れることをご提案しました。これは、見込み客に対し、簡単なアンケートに答えてもらうことで現在のその人の状態(運動習慣、疲労度、日々の活力等)のスコアリングをするというものです。これを受けてT社では、サービス利用前と一定期間経過後(このケースの場合は6か月間でした)に同じアンケートを受けてもらい、改善効果を数値化するという試みをはじめることになりました。

 このデータの蓄積をしばらく継続したことにより、見込み客がアンケートに答えた段階で、このパーソナルトレーニングに通ったら、6か月後にどのような状態を目指せるかを具体的に示せるようになりました。過去の類似スコアの人がどれだけ改善したか、という実績が集まったためです。

 この、「サービスを通じて自分がどうなれるか」というのは、まさに「サービスの価値」に他なりません。T社はサービスの価値を可視化・数値化することで、納得感・期待感を高めた状態で商談に臨むことができるようになり、売値のアップを含めた業績改善を実現したのです。

 いかに自社の製品・サービスに自信のある会社であっても、それが買い手に十分に伝わらなければ、当然ながら業績向上にはつながりません。買い手にとってのメリットを具体的に、できれば定量的に、事前に示す仕組みを取り入れることで、期待値や信頼性の向上を実現できます。この「価値の可視化」というひと工夫が、訴求を強化し成約率を高める上で、決め手になるかもしれません。ぜひあなたの会社でも、買い手目線での「価値の可視化」について改めて考えてみてください。

※当コラムで取り上げている当社コンサルティングの実事例は、お客様の機密保持と読みやすさ向上のため、コラム用に一部簡略化・改変しています。

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