第45回 信頼構築におけるSNSの効用

SNSの運用で自社の姿勢や他社評価を訴求し、信頼を構築せよ

SNSは、企業の「姿勢」や「他者評価」をダイレクトに伝える強力なツールです。信頼を構築し、自社をブランディングしていく上で大きな可能性を秘めています。

「今どきSNSで発信をしていないと、それだけで距離を感じてしまいますよね」

 少し前に、当社のお客様である経営者の方がこう語っていたのが印象的でした。だからというわけではないのですが、筆者自身も最近、遅まきながらX(旧Twitter)での発信を始め、SNSの可能性を身をもって実感しているところです。

 中小企業にとって、SNSは単なる情報発信のツールではなく、信頼構築のための戦略的プラットフォームとなりうるものです。今回は、SNSをいまだ運用されていない経営者の方向けに、「企業としての信頼を築き、顧客・取引先・投資家・求職者といった人々との関係を深めていくために、SNSをどのように活用できるのか」を考察していきます。

目次

SNSでまず伝えるべきもの

 信頼構築の観点から見たSNSの大きな特徴のひとつとして、実際に関係が生まれるまではなかなか伝わりにくい、「熱意」や「誠意」、「こだわり」といった、企業や経営者の姿勢を見せられる点が挙げられます。

 たとえば、Webやカタログなどを通じた通常の訴求では、企業の製品やサービスのスペックや価格に目が行きがちです。一方、SNSを使えば、企業や社員がどれだけ情熱を持ってその商品を作り上げているかといった生の声を、日頃からよりダイレクトに伝えることができます。特に、個人の顔や名前を明らかにした状態であれば、周りにそうでない発信者が多い分、より信頼性や本気度が際立つはずです。

 また、社会不安の増大や持続可能性の重要性が叫ばれる現状においては、「社会が抱える課題に対し、先頭に立ってその解決に取り組む」という姿勢が、信頼やブランディングに直結します。その意志や熱意をリアルに伝えるためにも、SNSでの「顔の見える発信」は非常に効果的です。経営者や企業が直接的に声を上げ、社会的な問題にどう向き合っているかを伝えることで、消費者や取引先の信頼を得やすくなるでしょう。

 企業が自社の信頼を構築・訴求する上で、「能力」と「姿勢」の両方を伝えることが大切だと当社は考えています。SNSは特に「姿勢」を、従来の手段よりもさらにリアルに伝え、自社の信頼構築に活用できるといえます。

将来狙っていくべき「他者評価」の定量化効果

 信頼訴求の上では、前述の「能力」と「姿勢」を示すことが基本ではありますが、「他者評価」の高さを示すことも効果的な手段のひとつです。多くの方がご存じの通り、SNSではフォロワー数や「いいね!」の数、閲覧数、動画再生数といった定量的な数値が、誰の目にも見える形で表示されます。

 これは、企業や経営者にとって、他者からの評価をダイレクトに証明する手段になります。SNS運用を始めた初期の段階では、フォロワーや閲覧数が少ないためにその効果は限定的なものにならざるを得ませんが、これらの数値の多くは長く続けるうちに蓄積されていきます。やがて多くのフォロワーやリアクションがあれば、それ自体が「他者の信頼を集めている証拠」として機能するようになります。

 SNSのアカウント自体を伸ばしていく方法は、多くの書籍やセミナー等で取り上げられていますので、まずは気になったものを見てみることで良いと思いますが、いずれにせよ時間をかけて育てていくことは覚悟する必要があります。

 ただ、「他者評価」を示す方法のなかで、このSNSの数値を示すことは、比較的客観性が高いといえます。他の方法として代表的なのは「口コミ」ですが、数が少ない場合は特に、恣意性を感じさせることもあります。一方で、こうしたSNSの実績は、実際には一部を買うという手段も無くはないですが、それなりの信ぴょう性はあるでしょう。

信頼を壊さないために意識すべきこと

 当たり前ですが、SNSを使うこと自体に良い信頼を築く効果はありません。実態や本質をありのままに伝えやすくなる、という方が正しいといえるでしょう。つまり、SNSにはプラスの要素だけでなく、マイナスの要素も同じく拡散されやすいという特徴があるということです。

 これも改めて言うまでもありませんが、企業や経営者として信頼を築きたいのであれば、SNSで発信する内容については常に慎重である必要があります。熱意や他者評価を示すために投稿することは素晴らしいのですが、同時に、それがネガティブな形で広がらないように注意すること、特に、そもそも悪意を前面に押し出した投稿をしないようにしなければなりません。

 これを避けるためには、自社がSNSを使って構築したい信頼がどのようなものであるか、そしてどのような情報発信をしていくべきかを予め具体化し、それに応じた運用にしていくことが大切です。

 SNSは基本的にオープンな場であり、一度拡散されると取り消しが難しいこともあるため、事前にメッセージや企業のイメージを具体化にデザインしておくことが求められます。

 SNSは、経営者や企業が信頼を構築するための強力なツールです。特に、企業の「姿勢」や「他者評価」を明確に示す場として、信頼を育む大きなチャンスがある一方で、発信内容が信頼を損ねるリスクもあることを忘れてはなりません。

 まずは自社が築きたい信頼をデザインし、時間をかけて自社アカウントを育てていくという考え方が必要です。ひとたび実績が積み上がれば、長期にわたり自社の信頼を支え続ける強力なツールとなっていくはずです。

 まだSNSを活用されていない経営者の方は、事業における貴社の誠意やこだわり、努力をありありと伝えるべく、積極的な発信を通じて自社の信頼とブランドを作ってみてはいかがでしょうか。(筆者のXアカウント@IkejiriNaotoも是非フォローお願いいたします!)

著者プロフィール

トラスタライズ=信頼を対価に変えるコンサルタント
トラスタライズ総研株式会社

代表取締役 池尻直人

企業の「信頼を対価に変える」専門コンサルタント。
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、「信頼」を切り口に、顧客企業が売上・利益を向上させられる手法の研究・提言を行っている。

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代表取締役 池尻直人

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目次
ポイント1:「対価に変えられる信頼」の見つけ方
ポイント2:信頼を効率的に対価に変える戦略の描き方
ポイント3:信頼を可視化・証明する仕組みの作り方
ポイント4:信頼から確実に対価を得るための訴求のやり方
ポイント5:信頼活用に向けた社内の意識改革のやり方

価 格:¥2,200 (税込)
発売元:日本コンサルティング推進機構


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