第84回 自社の強み、本当にわかっていますか?

自社の強み、本当にわかっていますか?

中小企業の「本当の強み」は、顧客に選ばれる理由をつくる要素。その見極めには、現場・顧客の声を集めて認識を揃え、焦点を絞り込むことが必要不可欠です。

「そう考えると、うちの強みは製品力というよりは、小回りの良さや柔軟な生産体制なのかもしれませんね……」

先日、千葉県にある当社クライアントのK社様(製造業)にお伺いして、経営計画の作りこみをお手伝いしていた際、社長がおっしゃった一言です。「貴社の本当の強みは何だと思いますか?」という問いかけから始まり、色々とお伺いするなかで出てきた答えでした。

中小企業は「強みに集中すべきだ」とよく言われます。いわゆるSWOT分析など、経営学のフレームワークでも基本となる概念です。しかし実際には、自社の「本当の強み」を正しく認識できていないケースも少なくありません。

今回は、自社にとっての「強み」を正しく捉え、もう一歩深く掘り下げるための視点について取り上げます。


目次

製品力・サービス力は本当に「強み」なのか?

「うちの強みは製品そのものだ」「サービスの質だ」

自社の強みについて、こう捉える経営者は多くいらっしゃいます。もちろん、それが絶対に間違いというわけではなく、圧倒的な製品・サービス力で売り上げにつなげる会社も存在するでしょう。

しかし、実際に詳しく話を聞いて掘り下げていくと、「製品力こそが強み」という認識が必ずしも正確ではない場合もあります。

一般的に、中小企業の「強み」を想像してみると、「職人の技」のように量は増やせないが高い技術で「圧倒的品質」を実現している、というようなイメージをしがちです。

しかし、中小企業の現実として、

  • 設備や研究開発では大手に勝ちづらい
  • 消費者も、微細な品質差にそこまで敏感ではない
  • 競争軸そのものも、製品・サービスの質だけではない

といった状況も少なくありません。実は、製品・サービスの質そのものは「前提条件」にすぎず、選ばれる理由の中核は別のところに存在することもあるのです。


「選ばれる理由」こそが強みである

では、強みとは何なのか。

筆者が重視しているのは、
「自社の本当の強みとは、顧客が”あなたの会社を選ぶ理由”と直接対になる能力である」
という視点です。

極端に言えば、いくら自社が「これが強みだ」と思っていても、顧客の購買行動に影響していなければそれは強みではありません。

たとえば、

  • 「どこよりも低価格」を実現するための、安価に調達できる仕組みや生産性
  • 「いつでもすぐ対応してくれる」という安心感や対応スピード
  • 「気持ちの良いサービス体験」を支える担当者の誠実さや接客態度

カッコの中が選ばれる理由であり、そのあとにつながるのが強み、ということになります。

冒頭の会社でも、社長は当初は「製品力が強みだ」と考えていました。しかし、自社がなぜ受注を獲得できているのか、という問いに対し、実際に現場の声を聞いて整理していくと、

  • 一定品質の製品を、
  • 必要なタイミングに、
  • 少ロットでも柔軟に供給できる

この、顧客から見た「小回りの良さ」こそが、最も評価されているポイントでした。そしてそれは、この会社独自の、柔軟に調整できる生産システムと外注管理の仕組みだったのです。議論を経て、これこそが強みである、ということが明確になり、冒頭の社長のご発言が生まれたのでした。

「本当の強み」の見つけ方と留意点

強みを正しく捉えるには、「現場の声」と「顧客の声」を、力を入れて意図的に拾うことが欠かせません。

最もオーソドックスなやり方は、顧客と日々接している営業担当者に聞くことです。もちろん、直接顧客に聞ける場合はそれでも問題ありません。

  • なぜ自社の商品・サービスが選ばれているのか
  • 他社と比較された時、最終的に自社を選ぶ理由は何か
  • 自社の価値を語るとき、どのポイントで反応が変わるか

こうした情報は、社長が現場を離れている期間が長かったりすると、社長自身も正しく認識・理解できていないことがあります。さらに、営業担当者同士でも認識が異なることも少なくありません。

こうした場合には、自社として最も重視すべき要素を1つか2つ程度に絞り込むことが大切です。

なぜなら、「選ばれる理由」を磨き上げることが、中長期的な経営の指針の1つになることが多いです。しかし、リソースの限られる中小企業の場合、あまり多くの要素を伸ばすことが難しいからです。

色々な要素に手を出して焦点がボヤけてしまえば、投資も人材配置も分散し、メッセージも統一されなくなります。

まずは社内の意見を集め、
「自社は何によって選ばれているのか」
その認識を揃えることが、強みの深堀りの第一歩です。


自社にとっての「強み」とは、顧客があなたの会社を選ぶ理由を形づくるものといえます。

つまり、「強み」明確にするということは、
「何にこだわり、どのようにして選ばれるのか」
という、自社が提供すべき価値の焦点を定めることともいえます。

強みが明確になると、

  • その企業が顧客に対してどんな価値を生み出すのか
  • その結果、社会にどのような貢献を果たせるのか
  • それらの成果を最大化するために、どのような能力を高めていくのか

こうした議論も自然と輪郭を帯びてきます。

「なんとなくイメージで決める」のではなく、「選ばれる理由としての強み」を具体的に定義し、磨いていくことで、企業の発信・事業の成長・価値の創造は、驚くほど一貫性を持ち始めます。そしてこれが自社の信頼・ブランド構築を加速させる第一歩にもなります。

それでは、あなたの会社の「本当の強み」は何でしょうか。ぜひ、もう一段深く掘り下げてみてください。

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著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

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代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
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