第74回 節目の会社は、経営計画と信頼で未来を語ろう

創業〇周年や事業承継などの節目は、未来を共有する絶好の機会です。経営計画と信頼を軸に描けば、次の10年に向けたスタートダッシュを切ることができます。
「創業30周年を迎えるのに、何かしないといけないのは分かってるんです。でも…何をやったら“意味がある”のかが見えなくて」
先日ご相談にいらしたある社長が、開口一番にそう語りました。節目の年なので何かやらなくてはならない。イベント実施のため会場の確保や招待客への案内の指示はした。でも、社長自身は心の中で「本当にそれだけでいいのか?」というモヤモヤを抱えているようでした。
別の企業では、先代から引き継いだ社長が、就任1年目の節目を迎えるなかで「理念もビジョンも、父の言葉をそのまま掲げていていいのか」と悩んでいました。いずれも、周年や承継といった“節目”に直面したからこそ浮かび上がってきた問いです。
こうした節目は、これからの10年をどう生きるかを自らに問い、社内外へと語る絶好のチャンスです。過去の総括や儀式も不要とは言いませんが、皆が興味を持つのはこの会社がこれからどうなっていくのか、社長はどうしていきたいと思っているのかということ。
節目のいまを、次の10年を描くスタートラインとするために。今回のコラムでは、私たちが大切にしている「経営計画」と「信頼」という視点についてお伝えします。
創業周年や事業承継が「単なる行事」で終わっていないか
周年や承継などの「節目」においては、式典や記念品の作成などの「儀式」とその準備に想像以上に意識が吸い寄せられます。必要なことではあるのですが、それだけでは今と同じような未来にしかつながりません。
節目において絶対に実施すべきなのは、長期(例えばこの先10年)のありたい姿とそこに至る道程・ストーリーを、社長自身の言葉ではっきりと示すことです。会社として大きいイベントなので体裁を整えることに腐心してしまいがちですが、より望ましいのは将来向けた再起動・再加速であり、節目のときこそロケットスタートをかけたいものです。
なお、事業承継においては「先代の言葉を残すかどうか」で迷うケースがあるかもしれません。そのような場合、価値観は受け継ぎ、表現ややり方はアップデートすることにすれば、軸が通りやすくなるでしょう。
節目の時こそ、「経営計画」で未来を可視化すべき理由
周年や承継の節目にこそ、経営計画を立てて運用していくべき理由があります。ここでは三つの視点に絞ってお伝えします。
理由①:社内外の注目・期待が一気に高まるから
節目のタイミングでは、社員・顧客・取引先・金融機関など、多くの関係者が普段以上に自社に注目します。その注目に対し、経営計画は具体的な答えを示す有用なツールになります。計画がなければ、それぞれが自分の立場から「こうあるべきだ」と考え、意見や行動がばらばらになることもありえない話ではありません。
それに対し経営計画があれば、社長の意志が全社共通の前提に変わります。その結果、日々の議論や判断に、経営計画という基盤が生まれ、意思決定と実行の質が高まるのです。
理由②:役割や権限の見直しが受け入れられやすいから
承継や周年の節目は、「組織のやり方を変えること」に対し、周囲から受け入れられやすいタイミングでもあります。過去からのやり方は通常なかなか変えにくいものですが、こうした節目のタイミングでは見直すことに納得感も生まれます。
本来、暦の上で創業から〇年経過することと、役割や権限を見直すことには何の関係もないはずですが、不思議と受け入れられやすいのが実態です。何もないタイミングで行うと強い抵抗にあうようなことも、節目のタイミングであれば、役割や権限の整理を自然に進められるのです。
理由③:計画の説明・浸透の機会が自然に設けられるから
周年行事や事業承継後は、式典・挨拶、主要先や金融機関への訪問、全社会議など、説明の場が次々と訪れます。これも日常とは異なる要素で、こうした機会に経営計画、つまり自社の将来について繰り返し伝えることで、自社の理解度や魅力を高めることができますし、認識も比較的短期間で揃えることができます。疑問や懸念もその場で受け止められるため、計画の浸透もスタートもスムーズになります。
節目にリスタートをかけることは周囲に違和感なく受け入れられることを利用して、経営計画の浸透と実践を一気に加速させましょう!
「信頼」を軸に据えて、その未来を社内外に広げる
これからの時代に、経営計画が実施項目や数字の整理だけにとどまらず、魅力ある物語となるためには、自社の「信頼」を意識し軸に据えることが有効です。信頼が広がる先は、大きく分けて次の3つの方向です。
- 顧客からの信頼
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自社の提供価値を正しく認識し、それを維持・増幅するような計画に裏打ちされたビジョンは、期待感を大きく高めます。また、実際に提供価値の向上も進んでいきます。この根幹になるのは常に、顧客が何を求めているか(=なぜ売れるのか)の正しい現状把握と共通言語化です。
- 社会からの信頼
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自社の強みや事業活動そのものを通じて貢献できる社会課題の解決こそ、中小企業が追い求めるべき社会貢献領域です。慈善やお題目ではなく、本業と一体になった取り組みだからこそ、自社の持続的な成長に結びつきますし、その実現に対する期待値も高まり、社会からの信頼が得られるのです。
- 従業員からの信頼
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待遇が良くなっていくことが希望につながることは言うに及ばずですが、経営計画の中に「会社として何を大切にし、どんな未来を実現したいか」が言語化されていると、従業員は自分の仕事に意味を見出すことができます。目標に追われるだけでなく、「自分の努力が未来を形づくっている」という実感を得られるため、それに共感できる人が集い、活躍する土台を築くことができます。
この3方向に対して信頼を形にすることができれば、経営計画は単なる内部資料ではなく、未来を共有する物語として息づきます。そして、顧客・社会・従業員がそれぞれの立場で応えてくれることによって、あなたの会社は次の10年へさらに飛躍していけるようになるのです。
節目のタイミングは、過去を振り返る場でありつつ、未来を共有する場としてまたとない機会でもあります。経営計画と信頼の視点で成長の設計図を描き、顧客・社会・社員に向けてそれを語るとき、節目は単なる行事ではなく「次の10年へのスタート地点」へと変わります。
とはいえ、その準備には一定の期間が必要になるもの。強力なリスタートを切るために、節目を迎える会社・経営者には、早めのご準備を強くお勧めします。

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
社外経営企画室長・経営企画パートナー。
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
社外経営企画室長・経営企画パートナー。
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ポイント2:信頼を効率的に対価に変える戦略の描き方
ポイント3:信頼を可視化・証明する仕組みの作り方
ポイント4:信頼から確実に対価を得るための訴求のやり方
ポイント5:信頼活用に向けた社内の意識改革のやり方
価 格:¥2,200 (税込)
発売元:日本コンサルティング推進機構

