第106回 「お客様の声」を、経営の鏡に

「お客様の声」を、経営の鏡に

「お客様の声」を集めている会社は多いのですが、その多くは対外PRの素材として並べて終わっています。しかしお客様の声は、対外発信のための材料である前に、自社の経営の解像度を上げる、もっとも身近な鏡でもあります。

「お客様の声、うちもいくつかいただいていますよ」

中小企業経営者と話していると、こうした言葉が返ってくることがあります。ホームページに数件並べている、提案書に1ページ載せている、創業何年かの節目にいただいたものを社内に飾っている、ということが多いです。

ただ、もう一歩踏み込んで「最近、社員と一緒にその声を読み返しましたか」「そこから何か経営判断を変えましたか」と尋ねると、答えに詰まることが多い印象です。集めて並べるだけで止まってしまっていて、「お客様の声」が対外PR素材以上のことに使われずに終わっている、というのが多くの会社の実態です。

しかしお客様の声には、自社が思い込んでいる自社の姿とは、しばしばずいぶん違うものが映っています。

目次

「お客様の声」に映っている、3つのこと

第一に、自社が実際に提供している価値です。多くの社長は「うちは品質で選ばれている」「うちは技術で選ばれている」と語ります。しかしお客様に改めて「なぜ私たちを選んでくださったのですか」「決め手は何でしたか」と尋ねてみてもらうと、そこで返ってくる言葉が、社長の想像とは違うことがよくあります。例えば、「相談のしやすさ」「納期の正確さ」「担当者の安心感」など、社長が当たり前のことだと思っていた部分が、お客様にとっての価値になっていることも少なくありません。自社の強みは、自社目線ではかえって見えにくいものです。

第二に、お客様が自社を選び続けてくれている理由です。一度の取引で終わらず、リピートや紹介につながっているお客様には、必ずそれなりの理由があります。その理由を言葉として掴めれば、次の営業の精度が上がります。逆に、その理由が分からないままだと、自社にとって本当に大切な顧客像も見えず、どのお客様にも均一に営業をかけ続けることになります。

第三に、社員にとっての自分の仕事の意味です。これは見落とされているケースが特に多い要素かもしれません。日々の業務に追われている社員にとって、「自分の仕事が、誰かの役に立っている」という実感は、想像以上にエネルギーになります。お客様からの具体的な感謝の言葉を、社員と一緒に読む時間は、研修や朝礼で何を語るよりも、社員の主体性を引き出すことがあります。

これらの示唆を引き出すには、集めるときの質問の設計が大切です。「ご満足いただけましたか」だけでは、「はい、ありがとうございました」しか返ってきません。次の流れで聞いてみると、声の質がずいぶん変わります。

  • 当時、どのような状況・課題を抱えていらっしゃいましたか
  • 弊社を知ったきっかけは何でしたか
  • 他社と比較されましたか。最終的な決め手は何でしたか
  • ご利用になって、どんな変化がありましたか
  • ご利用前と後で、印象は変わりましたか

「いつ」「何で困っていて」「なぜ自社を選び」「何が決め手で」「どうなったか」の流れで言葉が出てくると、社員にとっても、対外発信にとっても、判断材料として使える形になっていきます。

承継社長にとっての、お客様の声を聞くということ

また、事業を承継した社長にとっては、お客様の声を聞くことには、もう一つ大きな意味があります。それは、先代から引き継いだ会社が、世の中にとってどういう存在だったかを、自分の目で確認する営みになるからです。

社内の誰かを介して伝聞で聞くのとも、先代から「うちはこういう会社だ」と聞かされてきたのとも違う、お客様の実感に直接触れる経験は、承継後しばらく経った社長にとって、想像以上に自分の経営の軸を据える助けになります。「自分が大切にしたいものは、すでにお客様も評価してくださっている部分なのか」「むしろ、自分が変えたいと思っていた部分こそが、お客様にとっては価値だったのか」。受け継いだ会社の輪郭が、お客様の言葉を通じて見えてきます。

そういう意味では、お客様の声は、対外発信のためのものである前に、経営者自身のための鏡であるといえるのかもしれません。

オフィスで読むお客様の声

自社の「お客様の声」が、経営を映す鏡として使えているか、次の3つの問いで確かめてみてください。

□ 直近1年で集めたお客様の声を、社員と一緒に読み返したことがある
□ お客様の声から、自社が「実際に提供している価値」を見直したことがある
□ 「なぜ自社を選んでくださったか」を、複数の顧客に具体的に尋ねたことがある

Yesと言えなかったものがあるなら、ホームページに並べる前に、まずは3社のお客様から具体的な言葉を聞いてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。集めた言葉が、自社のかたちを映し出してくれるはずです。

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著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

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トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

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