第108回 中小企業の経営管理は誰が担うのか

中小企業の経営管理は誰が担うのか

経営企画の機能が必要だと分かっていても、社長が一人で抱えれば限界が来る。社員に任せようとしても、うまくいかない。中小企業の経営管理を機能させるには、「担い手」の選定がカギとなります。

「いわゆる経営管理が必要だと思って、自分でやろうとしたんです。本を読んで、Excelで月次の管理表をつくって。でも2か月で更新が止まってしまいまして・・・」

ある承継社長の言葉です。意欲がなかったわけではありません。日々の判断と現場対応に追われるうちに、緊急度の低い管理の仕事が後回しになったという、よくある話です。

では、社員に任せればいいのか。それも簡単ではありません。経理担当に数字の集計を頼むことはできても、「この数字をどう読み、次に何をすべきか」を考える役割まで期待するのは酷な場合が少なくありません。

中小企業の経営管理は、「間違いなくやるべきだが、工数や能力の面でできる人がいない」というジレンマがつきものなのです。

目次

社長がやる経営管理は、どうしても停滞してしまう

社長が経営管理を兼ねることには、いくつかの問題があります。

例えば、経営管理の目的のひとつとして、意思決定のための材料を揃えることが挙げられます。数字を集め、選択肢を比較し、判断の土台をつくる。しかし中小企業では、その材料を整える人と、それをもとに決める人が同一人物、すなわち社長になるというケースが散見されます。

これは「自分で問題を出して自分で解く」ような状態です。自分の頭の中にある前提を、自分で疑うことは難しいものです。例えば売上の数字を見てみても、自分が関わった案件の印象が先に立ち、全体の傾向を冷静に読みづらくなったりします。

もうひとつの問題は、優先順位です。社長の一日には、顧客対応、社員の相談、資金繰りの確認、突発のトラブル対応が詰まっています。経営管理の作業は「緊急ではないが重要」の典型で、緊急な仕事に押し出され、「来月まとめてやろう」といったことが起こります。意志の問題ではなく、目の前の対応を優先せざるを得ない現実があるのです。

社員に任せる場合には、組織や職位が壁になる

では、社員に経営管理を担ってもらうのはどうでしょうか。

数字の集計や資料の作成は、社員のほうが丁寧にできる場合も多いのですが、この場合、壁になるのは「立場」です。

経営管理の仕事には、部門を横断して情報を集め、全社の方向性と照らし合わせて判断材料を整える工程があります。そうなると、営業部にも製造部にも踏み込む必要がある。しかし、特定の部署に所属する社員が他部門に「数字を出してください」「この方針で問題はないですか」と聞いて回るのは、組織上の摩擦が起きやすいものです。

さらに難しいのは、社長の方針そのものを検証する場面です。「社長、この計画の前提は楽観的すぎないでしょうか」と言える社員がいる会社はそう多くはありません。社長の側はそう思っていなくとも、社員の側が社長に対し自由に発言する、というのはハードルが高く、多くの中小企業では、そうした発言ができる関係性は限定的なものと思われます。

つまり、中小企業の経営管理が抱えるジレンマはこうです。社長がやれば視野が固定される。社員に頼めば組織や職位が壁になる。どちらも、個人の努力ではなかなか乗り越えにくいものです。

また、そのような経験や能力を備えた人材を採用してくるという手もありますが、給与・採用コストなどを踏まえると、年間1千万円以上のコストが必要になってくる可能性があり、中小企業にとっては大きな支出となってしまいます。

「第三の担い手」が機能する条件

こうしたジレンマに対する一つの解が、社外の人間に経営管理機能の一部を預けるという方法です。

もちろん、経営判断そのものを外部に委ねるわけではありません。数字を整理し、選択肢を見える化し、月に一度の振り返りを回す。必要なら経営計画の策定や、評価制度の設計など、会社全体を動かす手段自体も一緒に考え手を動かす。そうした経営管理・経営企画の実務を、社外の第三者が社長と並走しながら支えていく形になります。

ただし、外部の人間なら誰でもいいわけではありません。うまく機能するには条件があります。

第一に、社長と対等に議論できる関係です。経営管理の仕事には、社長の前提を問い直す場面が含まれます。「先生」として教えるだけの関係でも、「業者」として指示を受ける関係でもなく、経営の論点を一緒に整理し、必要なら一緒に手を動かせる距離感が必要です。

第二に、社内の文脈を理解していることです。外部の視点が有効なのは、その人が内部の事情を踏まえたうえで俯瞰できるときです。事業の流れ、社員の顔ぶれ、過去の経緯を知らない人間が、いくら助言をしても実行にはなかなかつながらないものです。継続的に関わり、現場の事情を深く理解しているからこそ、助言が現実的なものになります。

第三に、最終的に社内で経営管理機能を回せる状態を作れることです。外部の担い手が永続的に必要な状態は、依存であって仕組み化ではありません。本来あるべきは、経営管理のやり方が社内に根付き、社長や社員が自分たちで回せるようになること。伴走の目的は、走り方を一緒に覚えることであって、永遠に並走することではないのです。

あなたの会社では、経営企画の「担い手」は誰ですか?

□ 経営数字の振り返りや計画の進捗確認を、社長以外の誰かが整理していますか?
□ 社長の判断の前提を、率直に問い直せる相手が社内外にいますか?
□ 事業の進捗や業績を振り返る経営管理的な作業が、継続的に行われていますか?

すべてにYesと言えなかったなら、経営企画の「担い手問題」は未解決かもしれません。
社内に適切な人材がいなければ外部に目を向けてみましょう。

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専門家インタビュー(外部サイト)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

社外経営企画室長・経営企画パートナー
独自の「トラスタライズ手法」を用いて、見えない信用や信頼を、目に見えるカタチに変え、対価へと変えることで多くの経営者から注目を集めている。企業経営において社会・顧客双方の価値の創出が求められる時代にあって、顧客企業が持続的に成長し、信頼を築き上げていけるよう、経営企画機能を伴走型で提供している。

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