未経験者を採れる会社は、なぜ採用難に強いのか ~採用の間口は「育てる仕組み」で広がる~

未経験者を採れる会社は、なぜ採用難に強いのか ~採用の間口は「育てる仕組み」で広がる~

採れないなら育てればいい。当たり前の話ですが、これを仕組みとして実行できている会社は意外と多くありません。採用の間口は、社内の「育てる力」で決まります。

「求人を出しても、応募が来ないんです。たまに来ても、うちの仕事の経験がある人はまずいなくて」

採用の悩みは、ここ数年で一段と深刻になりました。どの業界も人手が足りず、経験者は同業間の取り合いです。募集への対策として、媒体を増やす、条件を見直す、紹介会社を使うといった手はもちろんありますが、探している相手が「即戦力の経験者」のままである限り、限られた人を奪い合う構図は変わりません。

こう言うと、「採れないなら、育てればいいじゃないか」という声が聞こえてきそうです。まったくその通りの当たり前の話です。ところが、採用に苦戦する会社の実態として、未経験者を最初から対象から外さざるをえなくなっているケースも少なくありません。当たり前のはずのことが、なぜうまくいかないのでしょうか。

目次

「育てる」を選択肢にできない、3つの理由

未経験者を採らない理由を尋ねると、返ってくる答えは大体以下の3つのどれかです。

「任せられる仕事がない」

「教えている余裕がない」

「育つ前に辞められたら大損だ」

この3つの答えの中に、その会社に足りていないものがそのまま表れています。

1つ目は、任せる仕事の切り出しです。仕事がベテランの「一人前セット」でしか存在していないケースは意外と多いものです。未経験の人にどの部分から任せるかが決まっていないので、「何をやらせればいいか分からない」となり、「まだ早い」ということで未経験者採用の検討は終わります。

2つ目は、教える時間の確保です。教育係を決めている会社でも、新人に教える時間は色々な人の追加業務となることが少なくありません。現場が忙しければ、教える時間は真っ先に削られます。放置された新人は自信を持てないまま辞め、その経験が「うちに未経験者は無理だった」という結論として社内に残ります。教える仕組みの不足が生んだ失敗であり、対策のしようはあるにも関わらず、以後は採用の間口を狭め続けることになります。

3つ目は、戦力化までの見積りです。一人前になるまで何か月かかり、その間の人件費と教える側の負担がどれほどになるか。これを数字にしたことのある会社は多くありません。見積りがなければ、育成は「いつ終わるか分からない投資」、つまり賭けに見えます。設備投資なら回収期間を試算するのに、人への投資には物差しがない。だから怖くて踏み切れないのです。

この3つが欠けたまま「未経験でも採ろう」と決めても、受け皿がないので失敗し、「やはり経験者でないと」に戻ります。育成がうまくいかないのは、意志ややる気の問題ではなく、受け皿の仕組みが整っていないからです。

「育てる仕組み」は、順番に整えられる

裏を返せば、この3つを改善できれば、おのずと育成の仕組みは整ってきます。

まず、ベテランの仕事を分解し、未経験の人が最初の3か月で担える部分を切り出します。切り出してみると、経験がなくてもできる定型的な仕事が、ベテランの手元に相当量あることに気づくはずです。

次に、教える担当を決め、教える時間をその人の業務として計画に入れます。教える間はその人のアウトプットの量は一時的に落ちますが、そこも踏まえて計画化することで、初めて育成が業務になります。

最後に、一人前になるまでの期間と費用を、粗くてよいので見積もります。数字化できれば、育成という効果の見えにくい取り組みであっても、ある程度回収の見通しを持てる投資に変わります。

まずはここまで整えられれば、採用の対象を経験者以外にも少しずつ広げていくことができます。未経験者、異業種からの転職者、若手が候補に入るので、応募してもらえる母集団の規模が変わります。

ある製造業の会社は、中途の経験者採用だけを続けてきましたが、人手の確保に苦労が続く中で振り返ってみると、新人教育の体制がないために未経験者や新卒という広い市場に入れず、狭い経験者市場で同業との取り合いを続けていたことに気づきました。人手不足に悩まされていた理由は、募集の努力が足りないことではなく、募集できる相手が仕組みによって狭められていたことだったわけです。

副産物もあります。教えるためには仕事を言葉にする必要があるので、切り出しと手順化を進めること自体が、属人化の解消につながります。また、教わる時間が業務として確保されている職場は、入った人が放置されないので、定着の面でも働きます。

もちろん、募集のやり方に改善余地がある会社もありますし、育成には時間がかかるので、目先の欠員は募集で埋めるほかありません。ただ、募集の強化が「いま市場にいる候補者の中から選ぶ」努力であるのに対し、育てる仕組みづくりは「候補者の範囲そのものを広げる」打ち手です。人が採れないという悩みが長引いているなら、募集と並行して、自社の受け皿の側を確かめてみる価値はあるはずです。

育てる仕組みを整える

あなたの会社には、未経験の人を受け入れる仕組みがありますか?

  • 未経験の人が入社したら、最初の3か月に誰が・何を・どの順で教えるか、答えられますか?
  • 教える時間が、教える人の業務として計画に織り込まれていますか?
  • 一人前になるまでの期間と費用を、数字で見積もったことがありますか?

すべてにYesと言えなかった方は、「育てる」が方針としては正しいまま、仕組みとしてはまだ存在していないのかもしれません。まずはベテランの仕事の中から、未経験の人に最初に任せられる仕事を一つ切り出してみることが、最初の一歩になります。

当社では、中小企業の「社外経営企画室」として、人が育ち定着する仕組みづくりや、人事評価制度の構築・運用を社長と一緒に進めています。

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専門家インタビュー(外部サイト)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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ポイント3:信頼を可視化・証明する仕組みの作り方
ポイント4:信頼から確実に対価を得るための訴求のやり方
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価 格:¥2,200 (税込)
発売元:日本コンサルティング推進機構


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