「伴走支援」の中身を言葉にする~社外経営企画室として大切にしていること~

社外の経営支援に不満があるわけではない。それでも、会社が動いている実感がない。「伴走支援」という言葉は、より具体的にとらえる必要があります。
「伴走型、という言葉が刺さりました」
初めてお会いした製造業の社長から、そう言われたことがあります。数年後の事業承継に向けて、後継者と一緒に計画を作りたいというご相談でした。
お話を伺うと、計画づくりは初めてではありませんでした。長年付き合いのある支援機関と、事業承継を見据えた計画を一度作っています。その内容に不満があったわけでもないそうです。
ただ、担当者が代わってからは顔を合わせる機会が減り、伴走してもらっている感じではなくなったそうです。その計画はその後の経営にはあまり使われず、社長の言葉を借りれば、「白紙に戻して、まっさらから作り直したい」という状況だったのです。
さらに、別の相談先からは、製造の一部を外注に切り替えてはどうかという提案も受けていました。経営上は筋の通った提案です。しかし、この社長は製造を自社で管理し、品質をつくりきることに、会社の強みと誇りを置いていました。
どちらの支援者も、間違ったことをしたわけではないと思います。それでも話を聞きながら、私は少し気になりました。
計画を作るまでに、この会社の実態にどこまで踏み込めていたのか。現場でどんな話が交わされているのかを知っていたのか。数字を一緒に見て、その後の進捗まで追っていたのか。
社長が求めていたのは、助言だけではなかったのだと思います。
「伴走します」は、支援者によって中身が違う
支援内容に大きな不満はない。助言も間違ってはいない。それなのに、会社が動いた実感がない。こういうとき、何が足りなかったのかは、はっきりした形では言いにくいものです。相手に明確な落ち度があるわけではないので、文句にもなりません。
「もっと頻繁に来てほしかった」とも少し違います。月に一度会う回数を月に二度に増やしても、関わり方が同じなら状況はそれほど変わらないでしょう。
こんなとき、よく使われるのが「伴走」という言葉です。支援者が「伴走」してくれれば、もっと目に見える成果につながったはず…確かにそうかもしれません。
ただ、この「伴走」という言葉は、当社も含め支援する側がよく使うものの、具体的な意味合いは決まっているわけではありません。同じ「伴走します」でも、月に一度社長の話を聞いて助言することを指す場合もあれば、社内の会議に入り、議論に加わって、数字や資料を一緒に作ることを指す場合もあります。経営者が「一緒にやってほしい」「もう少し中に入ってほしい」と感じるのは、前者の支援を受けながら、後者を期待していたときでしょう。
では、その「一緒に」「中に入る」が欠けていると感じるのは、具体的にどんな場面なのか。筆者は、実際の支援の現場から見て、いくつかのケースがあると思っています。
まず、社長とは定期的に面談しているのに、部長たちが集まる経営会議には参加していないケースです。
社長から話を聞くことと、会議の場で各部門の責任者が何を話し、どこで意見が食い違い、何を気にしているのかを直接聞くことでは、得られる情報がまったく違います。
議事録を後から読むだけでは分からないこともあります。また、先ほどの外注化のような提案も、現場の考えや、その会社が長く大切にしてきたことを理解することは、支援者として何か提案をする場合には押さえておきたいところです。そうでなければ、合理的な提案であっても社内では受け入れられにくくなってしまうことがあります。
次に、数字をすべて会社側が用意しているケースです。
「売上の内訳は御社でまとめてください」と言われ、社長や経理担当者が資料を作り、支援者は出来上がった数字を見てコメントする。
もちろん、それだけでも言えることはたくさんあります。ただ、経営企画の役割まで外部に求めるのであれば、売上の内訳を分解したり、予測を作ったり、KPIを設計したりするところでも力を貸してほしいと経営者が考えるのは自然です。
もう一つは、資料の作成などの実務です。
打ち合わせで方向性は決まったものの、「では、この内容で御社の方で資料を作ってください」となれば、実務は再び社内に戻ります。
そもそも中小企業では、経営企画を専任で担う人がいないことも少なくありません。だから外部に頼んでいるのに、分析や資料作成を結局社長や社員が担うのであれば、期待していた支援とは違ってきます。
「伴走支援」に求めたい4つの関わり方
ここからは、私たちが「伴走」という言葉に込めるこだわりを書いていきます。「伴走」の中身は、支援する側が先に示すべきものであり、それを体現したものが当社の「社外経営企画室」サービスだからです。また、私たち自身がそう名乗っている以上、これにそぐわない仕事はできないという自分たちへの戒めでもあります。
1.社内の会議に参加する
経営者との定例面談だけでなく、必要に応じて部門の会議や部署間の調整の場にも参加します。
私たちが支援しているあるサービス業の会社では、月次の定例に加えて、機能ごとの個別会議を含めると、月に5~6回ほど社内の会議に参加しています。
その会社では社内に経営企画室が新設され、筆者は室長として参画しています。立場は社外でも、実際の動き方は社内の経営企画部門と大きく変わりません。支援の効率を考えると最適解ではないかもしれませんが、このスタイルの方がより有益な支援ができるため、当社のサービスの中では大切にしている部分です。
2.計画を作った後もともに数字を追う
中期経営計画を作ることは大切ですが、それだけでは経営は変わりません。
計画を毎年見直し、予算と実績に差が出れば、その理由を数字で確認する。その結果を次の計画や予算に反映していく。
計画を経営に使うのであれば、策定後の確認と見直しを、忙しい経営者にも伝わる形で支援する必要があると考えています。
3.数字と資料のたたき台を自分たちで作る
売上の予測モデルを作る。KPIを設計する。従業員アンケートを分析する。こうした実務も、会社の状況によっては経営企画の仕事になりうると考えています。
そのための作業、例えば資料作成についても、最初から完成版を会社側に作ってもらうのみならず、提案側が行う方が合理的と思われる場合は、支援者側がたたき台を作り、それを経営者と一緒に磨いていきます。
中小企業が社外に経営企画を求めている場合、分析や資料作成まで支援する側が担う方が合理的な場合が多いと考えています。もちろん、いずれは内製化していくのが自然かつ望ましいのですが、代わりにできる人が育つまで、一緒に悩み、手を動かしていきたいものです。
4.社長が決めた後も、実行を一緒に進める
最終的に決めるのは社長です。支援者が社長の代わりに意思決定することはできません。
私たちがご支援をする場合は、社長が判断できるように数字や選択肢をそろえ、議論すること。これを大切にしています。そして「これでいく」と決めた後は、その方針が実際に社内で動き始めるところまで一緒に進めます。
計画を作り、判断材料をそろえ、実行状況を確認する。そこまでが「社外経営企画」としての仕事だと私たちは考えています。
もちろん、この4つをすべて行わない支援が悪いというわけではありません。経営顧問、研修、事業計画の策定支援など、それぞれに役割があります。
だからこそ、経営者が求めるものとのずれが生じやすいところでもあります。上記のような考え方がむしろ過剰だと捉えられるケースもあるかもしれません。
ただ、「伴走してほしい」と感じているのであれば、その言葉が何を指すのかは、支援者に確かめておいた方がよいと思います。
たとえば、支援を依頼するときには、こう聞くことができます。
- 経営会議にも参加してもらえますか。
- 計画を作った後、翌年の見直しまで一緒にやってもらえますか。
- 売上予測やKPIの設計もお願いできますか。
- 資料のたたき台は、どちらが作りますか。
- 方針を決めた後の進捗確認にも入ってもらえますか。
こうした点を具体的に確認出来れば、「伴走」という言葉だけで支援内容を判断せずに済むはずです。

冒頭の製造業の社長とは、その後、既存の計画を白紙に戻し、作り直すところから始めました。最初に「伴走型、という言葉が刺さりました」と言われたとき、筆者は少し身構えたところもありました。ここまで述べた通り、経営者と支援者の間でずれが生じやすい部分だからです。
しかし、この社長の中には、求めるものの輪郭がすでにありました。前の支援で何が薄れていったのかを、社長は自分の言葉で話してくださったからです。それがたまたま、当社のやり方・考え方と合致していたので、ご支援をさせて頂くことになりました。経営支援において「伴走」という言葉は耳障りの良い言葉ですが、経営者と支援者が同じ理解・合意のもとに契約をすることは非常に大切だと思います。
話を聞きながら、それを一つずつ具体的にしていく。社外経営企画室を担う側としては、まず大切にしたいことのひとつです。
- 支援者は、社長との面談だけでなく、必要な社内会議にも参加していますか。
- 売上予測やKPIなどの分析を、支援者自身が行っていますか。
- 方針を決めた後も、実行状況を一緒に確認していますか。
すべてが必要とは限りません。ただ、「伴走してほしい」と感じているのに、いまの支援がどこか物足りないのであれば、何をどこまでお願いする契約なのか、一度確認してみてもよいと思います。

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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発売元:日本コンサルティング推進機構



