中期経営計画で「重点課題」をどう絞る? ~優先順位を決める考え方~

中期経営計画の重点課題は、目指す姿への影響、課題同士の前後関係、使える人・時間・資金を照らし合わせて絞ります。優先順位を決める際は、今は着手しないことと、再検討する時期や条件も考えておくことが大切です。
営業を強化したい。採用や人材育成も進めたい。設備の更新、業務のシステム化、新事業にも手をつけたい。
中期経営計画をつくる際に会社の将来を考えると、取り組むべき課題が次々に出てきます。どれも必要に思えるけれども、すべてを同時に進める余裕はない。そんなとき、何を重点課題として選べばよいのでしょうか。
中期経営計画における重点課題とは、目指す会社の姿を実現するために、人・時間・資金を優先して充てる経営課題です。営業、人事、製造といった部門ごとの要望を集めたあとに、会社全体としてどこに力を入れるかを考える必要があります。
重点課題は、各部門から挙がってきたままとは限らない
重要度と緊急度による整理は、課題の優先順位を考える手がかりになります。ただ、中期の課題には、人材育成や新事業など、重要でも目の前の期限がないものも多く含まれます。「重要」と評価した課題が並び、そこから絞れなくなることもあるでしょう。
そのときは、数年後に目指す会社の姿との関係を確かめます。その課題を解決すると何が実現に近づき、放置すると何が難しくなるのか。売上の拡大、利益の確保、社長に頼りすぎない組織づくりなど、自社の目標に照らして考えます。
ある加工会社の計画づくりでは、設備を活用して売上を伸ばすため、営業強化、機械の導入、採用・育成などが議題になりました。
話し合う中で浮かんだのが、営業と生産の両方で原価や採算を把握する課題でした。営業では受注した仕事の採算を確かめ、生産では費用のかかる工程を見つけて改善したい。そのための数字を、担当者が使える状態にする必要がありました。
受注を増やしても、利益が残るか分からなければ、収益を高める判断は難しくなります。この会社では、営業と生産に共通する「お金の管理」が、計画を検討するうえでの大きな課題のひとつとして整理されました。
部門ごとの課題を並べた段階では、こうしたつながりを見落とすことがあります。目指す姿に照らして理由をたどると、複数の取り組みに関係する課題が見えてきます。
課題の前後関係から、取り組む順番を決める
優先順位を決める際には、何を先に整えれば、次の取り組みが進むのかも考えたいところです。直接売上につながる施策があったとしても、その前段階として先に準備しておくべきことがあるかもしれません。
企業買収後の計画づくりをご支援した製造業では、両社の営業連携、技術共有、品質管理、会計、人事制度などが課題に挙がっていました。
そこで、買収先を生産の拠点として位置づけ、両社の役割を明確にする方向で議論を進めました。開発、営業、製造をそれぞれどちらが担うかを決め、見積もりのルールも整える。その準備を進め、営業連携を次の年度から本格化する計画としました。
個別案件での協力は、その間も進める方針です。すべての準備が終わるまで営業を止める必要はありません。ただ、継続的に連携して受注を増やすには、まずは仕事の分担や採算の判断を、その都度社長に確認しなくてもよい状態に近づける必要がありました。
このように、先に決めることと、並行して進められることを分けると、優先順位を具体的な順番として考えやすくなります。
「今はやらないこと」を決める
重点課題をいくつに絞るかは、会社の体制や課題の規模によって変わります。必要な人・時間・資金を確保できる範囲かどうかが、判断の目安になります。
ある製造業の会社では、工場計画、システム導入、海外展開、人事制度などを長期の目標に照らして整理しました。工場の増設やシステム導入には直近の期間で取り組み、海外展開は準備と本格化を分けて計画する、といった整理です。
さらに計画を具体化すると、人事制度の見直しにも調整が必要になりました。当初は人事が新たな評価基準をつくる予定でしたが、採用や労務への対応で手一杯だったためです。
そこで、新基準の導入は見送り、当面は既存の評価基準案を使う方針に変更しました。人事担当者の採用と育成を進めたうえで、賃金制度の整備につなげる計画へ組み直しました。
制度を整える必要性は変わらなくても、担当者が時間を確保できなければ進みません。計画の項目だけでなく、実際に誰が取り組めるかまで具体的に考えることで、着手時期を見直す判断ができます。
見送った課題は、理由と再検討する時期や条件を残しておくとよいでしょう。「担当者が育ったら」という条件なら、育成の進み具合をいつ確認するかも決めます。なお、安全や法令対応など、期限を守って対処すべき仕事は、重点課題に選ぶかどうかにかかわらず必要な対応を確保します。
課題を絞っても、実行計画や数値計画を具体化する中で、順番や目標を見直すことはあります。最初に選んだ重点課題も、そうした確認を重ねながら、形を変えていくことは珍しくありません。それは決して悪いことではなく、計画としての精度が上がったと捉えるのがよいでしょう。

いかがだったでしょうか。自社の重点課題を決める際には、次の点をぜひ確かめてみてください。
- その課題を解決すると、目指す会社の姿にどう近づくか説明できるか
- 先に整えることと、並行して進められることが整理されているか
- 必要な人・時間・資金を明確化し、課題によっては今は見送る判断ができているか
すぐに答えが出ない項目があれば、その理由を幹部や担当者と話し合ってみてはいかがでしょうか。優先する課題とその理由を共有できれば、担当や期限を定める実行計画も具体化しやすくなります。
当社では、ありたい姿の具体化から重点課題、実行計画、数値計画、運用開始までを一緒に進めています。進め方は、中期経営計画実装100日プログラムでご紹介しています。

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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発売元:日本コンサルティング推進機構




