中期経営計画の発表会で、社長は何を話す?

中期経営計画の発表会で、社長は何を話す?

中期経営計画の発表会で社長が話すべきは、計画を立てた理由、目指す姿、それを表す数字です。方針ごとの取り組みの詳細などは責任者と分担するなど、よりよく伝える工夫が求められます。

「これ、発表会で5分や10分じゃ話しきれないよね」

中期経営計画書がほぼ仕上がり、社員に向けた発表会の段取りを考え始めた頃、社長からこうした声を聞くことがあります。

経営理念、外部環境と内部環境、方針、施策の一覧、数値目標。計画書には、何か月もかけて考えてきたことが詰まっています。どれも大事なので、できれば全部伝えたい。けれども、社員が集まれる時間には限りがあります。どのページを話し、どのページを飛ばすのか、そもそも全部を社長が話すべきなのか・・・

前回のコラムでは、中期経営計画書を、できた後に使う場面から組み立てる考え方を取り上げました。今回はその最初の場面である従業員への発表会で、誰が何を話すかを考えてみます。

目次

経営計画発表会で社長が話すべきは、計画を立てた理由と目指す姿、それを表す数字

計画書を最初のページから順に読み上げると、時間が足りなくなるうえに、聞く側の負担も大きくなります。施策の一覧を社長が一つずつ説明しても、社員はそれを会社全体の話として聞くことになり、自分の部署が何をするのかは頭に残りにくいものです。ある社長は、施策のページを見ながら「聞いている方としては、具体的に何をやるのか、なかなかつかみにくいよね」と話していました。

社長が話す時間は、社長にしか話せないことに充てたいところです。

・なぜいま、この計画を立てたのか
・計画の最終年に、どのような会社になっていたいのか
・それを数字で言うと、売上や利益がどのくらいの会社なのか

この3つが伝われば、施策の中身は後から担当役員や部署ごとに説明しても、計画の筋は社員に伝わります。外部環境の見立てなども、要点に触れる程度でよく、詳細まで読み上げる必要はないでしょう。

足元の業績が厳しいときも、基本的にはその数字は隠さずに話す方がよいと筆者は考えています。言いにくい数字であっても、どの方針で、何年目に、どう利益を増やしていくかと並べて示せば、前向きな話として伝えられるからです。

また、計画を運用し始めると、例えば半年に1回、年に1回といった頻度で、進捗報告の会を設けることがあります。ここでは、計画開始からの進捗・実績が説明内容に加わることになります。

ある会社の社長は、1年目の成果を数字で示したうえで、人手が足りないまま運営を続けた現場があったことについて、採用が追いつかなかったのは会社の責任だと謝罪の言葉を述べました。また、準備を進めていた施策の開始を1年遅らせることも、細部まで作り込むためという理由とともに、自ら説明しています。うまくいかなかったことや予定を変えたことまで社長が話すと、この計画は毎年の結果を確かめながら進めるものだと、社員にも伝わります。

方針ごとの取り組みは、部署の責任者が社員に説明する

では、社長が話さない施策の中身は、誰が伝えるのか。当社がおすすめしているのは、方針ごとの取り組みを、その方針を担う部署の責任者が話す形です。営業の責任者が「営業部としては、今年これとこれに取り組みます」と話せば、営業部の社員は自分たちの話として聞けます。社長から施策の一覧を聞くよりも、自分が何をするのかを思い浮かべやすくなります。その結果、各施策の内容が、それを本当に理解してほしい人に伝わりやすくなるのです。

ある会社の発表会では、社長が計画全体と前年の成果を説明したあと、各部の部長が順に登壇し、中期経営計画を自分の部署に落とし込んだ今期の実施計画を発表する形にしました。施策をどう受け止めてほしいかまで伝えられるのは、その仕事を一番よく知る責任者だからです。

責任者が話す形には、発表を聞きやすくする以外の利点もあります。社員の前で話すためには、責任者が計画書を読み込み、自分の部署の言葉に直しておく必要があります。その準備が、社長と責任者の考えをそろえる機会になるのです。さらに、社員の前で「今年はこれをやります」と話したことは、その後の毎月の会議で進み具合を確かめるときの前提にもなります。

もちろん、このやり方は準備に手間がかかります。責任者が自分の部署の計画を作るだけでなく、発表の前に社長と責任者が集まり、各部の計画をつき合わせておく必要もあるでしょう。部署ごとに計画を作ると、一つひとつは筋が通っていても、似たような取り組みが複数の部署から同じ現場に重なって降りてくることがあります。発表の前に、優先する順番と現場の負担を確かめておけば、無理の少ない計画として社員に示せます。手間はかかりますが、社長一人が全部を話す発表会よりも、計画が動き出す確度は高まると筆者は考えています。

発表会のあとに、社員の受け止めを聞いて応える

そして、発表会で話したことが社員にどう受け止められたかを聞いておくと、次の手が打ちやすくなります。ある会社では、発表会の最後に、参加者にその日の感想に加え、その会社での継続勤労意欲を尋ねるアンケートをとりました。定期的な進捗の報告でこうしたアンケートを続ければ、計画の効果を測る一つの指標にもなりえます。もちろん、こうして集めた声を、会社としてどうとらえるか・どう対応するかを回答することも有効です。

また、一度の発表会で計画がすべての社員に届くわけではありません。先ほどの会社でも、発表会で伝えられたのは現場の責任者の層までと考え、その先の社員には、部署ごとの研修などを通じて伝えていくことにしています。発表会のあと、誰が、どの場で、その先の社員に伝えるのかまで決めておくと、計画は現場に届きやすくなるはずです。

中計発表会

自社の中期経営計画の発表会について、次の点を確かめてみてください。

  • 社長が話す内容を、計画を立てた理由、目指す姿、それを表す数字に絞り込めているか
  • 方針ごとの取り組みを、各部署の責任者が自分の部署の言葉で社員に説明する段取りになっているか
  • 発表会のあとに社員の受け止めを聞き、会社として応える場を決めているか

すべてにYesと言えなかった場合は、発表会の進行表を書き出し、それぞれの時間に誰が何を話すのかを一行ずつ埋めてみてはいかがでしょうか。社長の持ち時間に施策の説明が並んでいたり、責任者の名前が一つも入っていなかったりすれば、そこが見直すところかもしれません。

当社では、ありたい姿の具体化から重点課題、アクションプラン、数値計画、運用開始までを一緒に進めています。進め方は、中期経営計画実装100日プログラムでご紹介しています。

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専門家インタビュー(外部サイト)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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