中期経営計画の目標はどう決める? ~「3年後の売上○億円」だけでは足りない~

中期経営計画の目標はどう決める?

「3年後に売上○億円」だけでは、会社の3年後の姿は見えません。その数字を実現したとき何が変わっているかを描くことが、目標設定の出発点です。

「3年後には、売上をここまで伸ばしたい」

中期経営計画の策定をご支援していると、最初に将来の売上目標が出てくることは珍しくありません。

もちろん、売上高自体は大切な目標です。ところが、

「その売上を実現しているとき、今の会社と何が変わっていますか?」

こんな質問をすると、少し考える時間が生まれることがあります。

既存のお客様からの売上が増えているのか、新しい顧客が増えているのか。新事業が立ち上がっているのか。人員は何人必要なのか。営業体制は今のままでよいのか。工場や設備の能力は足りるのか。そして、社長自身は今と同じ仕事をしているのか。

ひとつの売上目標から、いくつもの問いが出てきます。この問いに丁寧に答え、具体化していくことが、中期経営計画における「ありたい姿」を具体化する作業なのだと思います。

目次

売上目標は、ゴールというより「入口」

たとえば、現在10億円の会社が「3年後に15億円」と目標を置いたとします。

数字だけを見れば、必要なのは5億円の売上増です。

しかし経営計画として考えたいのは、その5億円がどこから生まれるのかです。

既存事業を伸ばすのか、新しい商品をつくるのか、新しい地域へ展開するのか。営業だけでなく、製造能力や採用、人材育成、システム、資金などにも影響が出るでしょう。場合によっては、「売上15億円」という数字を実現するには、今とはかなり違う会社になっている必要があります。

逆に言えば、そこまで考えて初めて、その数字が経営目標として意味を持ちます。売上や利益は、ありたい姿を表す重要な指標ではありますが、ありたい姿そのものではないのです。

「3年後の会社」を、いくつかの角度から描く

だとしたら、中期経営計画ではどのようなことを考えればよいのでしょうか。

過去のご支援を通じて、筆者は、売上・利益とあわせ、少なくとも事業、営業、業務・オペレーション、組織・人材、経営基盤、経営者自身の役割といった観点で多角的に考えておくと、計画が具体的になりやすいと感じています。

たとえば事業であれば、3年後の主力商品は今と同じなのか。営業であれば、現在の大口顧客への依存度はどうなっていたいのか。組織については、どんな役職や機能が必要なのか。採用するだけでなく、誰を育て、誰に何を任せるのか、といった具合です。

そして意外と重要なのが、社長自身が3年後に何をしているかです。

今は営業も採用も重要な意思決定も、ほとんど社長が担っている会社があるとします。その会社が成長しても3年後まで同じ状態なら、売上目標を達成したとしても、経営者の負担はさらに増えてしまうかもしれません。

「3年後には、部長が一定の判断をできるようにする」

「自分は日常業務ではなく、新規事業や重要顧客に時間を使う」

こうした状態を実現するというのも、立派な中期経営計画の目標です。

ありたい姿を描くと、「今やること」が見えてくる

将来像を具体化する意味は、夢を耳障りのよい言葉にすることではなく、今との違いを見つけることにあります。

〇年後には営業担当者が3人必要なのに、今は1人しかいない。

新規事業を売上の柱にしたいのに、まだ責任者がいない。

工場を増設しなければ目標売上を生産できない。

部長へ権限を移したいのに、経営数字を共有する仕組みがない。

このように、「〇年後の姿」と「現在」を並べると、初めて経営課題が具体的になります

ですから、中期経営計画の目標設定と課題設定は、本来かなり近い関係にあります。目指す姿が曖昧なら課題も曖昧になりますし、逆に目指す姿が具体的になればなるほど、「では何を変えなければならないのか」も見つけやすくなります。

ありたい姿は、最初から完璧でなくていい

ここでもう一つ大切なのは、最初に決めた目標を絶対視しすぎないことです。将来像を考え、必要な施策を具体化し、数字に落としてみる。その過程で、

「この人員では難しい」
「この投資額では資金的に厳しい」
「むしろ、こちらの事業を伸ばした方が現実的ではないか」

といったことが分かることがあります。そうであれば、目標や道筋をもう一度考え直せばよい。

中期経営計画は、一度決めた未来を守り抜くためのものではありません。将来を考えるための仮説を置き、現実と照らし合わせながら、会社として納得できる方向へ磨いていくためのものです。

以前のコラムでは、中期経営計画の価値は未来を正確に当てることだけではない、と書きました。今回の目標設定も同じです。

「〇年後に売上○億円」

もし自社の中期経営計画にそう書かれているなら、その横にもう一つ問いを置いてみてください。

「その数字を実現したとき、私たちの会社は、今と何が変わっているだろうか」

その答えを具体的にしていくところから、本当の中期経営計画づくりが始まるはずです。

当社では、ありたい姿の具体化から最初の経営会議まで、100日をひとつの目安として、一緒に進めるご支援を手がけています。進め方は 中期計画実装100日プログラム のページにまとめていますので、ぜひご覧ください。

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専門家インタビュー(外部サイト)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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