中期経営計画の数値計画はどう作る? ~アクションプランと利益・投資の計画をつなげる~

中期経営計画の数値計画では、年ごとの売上・利益と投資額を可視化しアクションプランと繰り返し照らし合わせることで、全体の精度を高めていきます。
ありたい姿を描き、重点課題を絞り、施策と担当・期限まで決まると、中期経営計画の中身はかなり見えてきます。次に取りかかるのが、数値計画です。
売上目標はすでにある。人を何人増やすか、どの設備をいつ入れるかも決まってきた。では、その計画で利益は年ごとにどう推移するのか。大きな投資をする年は、資金をどう賄い、借りた分をどう返していくのか。
前回のコラムでは、重点課題をアクションプランに落とす考え方を取り上げました。そこで決めた施策を数字につなげ、計画として成り立つかを確かめるには、どのように進めればよいのでしょうか。
施策を数値に変え、利益の推移を見る
数値計画の出発点は売上ですが、売上の見通しも施策と切り離せません。設備や人手に余力がなければ、受注を増やそうとしても、いずれその能力が上限になります。
当社が計画づくりをご支援したあるメーカーでは、今の設備で出せる売上の上限に、来期には届く見込みでした。その先の売上を伸ばすには、工場の拡張が前提になります。そこで、拡張した工場が稼働する時期と、それによって増える生産能力をもとに、数年先までの売上を置いていきました。
費用も、施策に沿って見積もります。材料費のように売上と連動しながら増える費用がある一方で、人件費や設備の減価償却費は、人を採ったり設備を入れたりした時点で段階的に増えます。どの年に、何人増え、どの設備が入るかなどをアクションプランから拾って数字を置くと、年ごとの利益の動きが見えてきます。
この会社でも、以前は費用の多くを売上の伸びに合わせて増やしていました。しかし計画を詰める中で、売上と一緒に増える費用と、増員や投資で増える費用を分けて見積もり直すように変えました。毎年の賃上げや、建屋・システムの費用も織り込んだうえで、利益を残せるかを確かめられる形にしたのです。
増員や大きな投資のある年は、売上が増える前に費用が先に増えることがあります。施策を数字に置いておけば、そうした年の利益がどこまで落ちるのかを前もって把握できます。
大きな投資の資金を、いつ・どう手当てするかを決める
利益の推移と合わせて確かめたいのが、お金の出入りです。工場の建設のように大きな投資があると、会計上利益が出ていたとしても、出ていくお金が入ってくるお金を大きく上回ることがあります。
この会社では、工場の拡張に伴う支払いが特定の年に集中し、その年の収支が大きくマイナスになる見込みでした。試算の結果、翌年以降に事業から生まれるお金で取り戻せる見込みではあったものの、その年の資金をどう手当てするかは決めておく必要がありました。
本業での儲けで資金を賄う、というのが唯一の答えではありません。手元の資金で乗り切れそうな場合でも、長く使う設備は長期の借入で手当てし、手元の資金は残しておくという考え方もあります。設備のための借入は、設備を建てる時期でなければ受けにくいものです。手元に資金を残しておけば、売上が落ち込んだ時期への備えにもなります。この会社でも、長期の借入を基本に考えることにしました。補助金や、投資を盛り込んだ計画の認定による税制の優遇など、使える制度がないかもあわせて確かめておくとよいでしょう。
手元の資金でまかなうか、借りるか、制度を使うか。どの方法を選ぶにしても、借りた場合の毎年の返済額を数値計画に置き、利益から返していけるかを確かめておくことが大切です。
そのうえで、売上が想定どおりに伸びなかった場合もシミュレーションしておきたいところです。この会社では、標準の計画に加えて、売上が上振れ・下振れする場合や、業界に特有の落ち込みが起きた場合を並べて試算することにしました。過去にあった売上の少ない時期が数年続いたらどうなるかも計算し、どの程度まで耐えられるかを確かめています。複数の場合を並べておくと、前提が外れたときに、投資の時期を遅らせるのか、借入を増やすのかといった対策を判断する手がかりになります。
数字で歪みが見えたら、施策や時期を見直す
そして、数字を置いてみると、アクションプランの段階では気づかなかった無理が見えてくることがあります。
この会社の場合は、各部門から挙がった増員の案を足し上げると、製造と管理部門を合わせてかなりの人数になりました。ところが、今の拠点では、物理的に受け入れられる人数に限りがありました。そこで、当面は受け入れられる人数に絞って採用し、新しい工場の完成後に追加で採用する計画に改めています。人件費の増え方も、それに合わせて組み直しました。
新工場の建屋についても、当初想定のサイズでは費用が膨らみすぎることが分かり、レイアウトや費用を見直すこととしました。その結果、よりコンパクトな動線に変えることで、将来の生産能力を大きく落とすことなく、金額を抑えたプランに変更する見通しが立ちました。
こうして施策の内容や時期などを直せば、それに応じて数値計画も変わります。数字を確かめてアクションプランに戻り、また数字に置き直す。この行き来を何度か重ねるうちに、計画の精度が上がっていきます。このプロセスが、実効性のある計画をつくるうえでは非常に重要であると、筆者は考えています。

自社の中期経営計画について、次の点を確かめてみてください。
- アクションプランで決めた施策を費用に落とし込み、年ごとの売上・利益の推移を出しているか
- 大きな投資の資金をどう用意するかを決め、売上・利益が想定を下回った場合でも乗り切れるかを確かめているか
- 数字にしてみて見えた無理を、施策や時期の見直しに反映させているか
すべてにYesと言えなかった場合は、アクションプランで決めた増員や投資を一つずつ数字に置きつつ、年ごとの利益とお金の出入りを可視化してみてはいかがでしょうか。売上・利益の推移の見込みや投資の時期、資金の手当てなどが明らかになれば、取引先・金融機関等と話をするときの材料にもなります。
当社では、ありたい姿の具体化から重点課題、アクションプラン、数値計画、運用開始までを一緒に進めています。進め方は、中期経営計画実装100日プログラムでご紹介しています。

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

著者プロフィール
トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人
中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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発売元:日本コンサルティング推進機構



