中期経営計画をアクションプランに落とすには ~重点課題を「誰が・いつまでに・何を」に具体化する~

中期経営計画をアクションプランに落とす~重点課題を「誰が・いつまでに・何を」に具体化する

中期経営計画の重点課題をアクションプランに落とすには、重点課題ごとに施策の選択肢を吟味し、必要な仕事に担当と期限を決め、担当者の業務量と仕事の順序を確認します。

「週に2回、幹部と打ち合わせをして進み具合は確認しているんです。ただ、見える化ができていなくて・・・」

中期経営計画づくりをご支援した製造業の社長から伺った言葉です。取り組みたいことは社長がマインドマップに整理しており、幹部との定例も続いていました。それでも、個々の取り組みについて、誰が・いつまでに・何をするかまでは書き出されていませんでした。これでは、打ち合わせで決めたことも記録に残らず、そのまま流れてしまいかねません。

重点課題を決めたあとにも、同じことが起こりえます。「採用を強化する」「広報を立て直す」と計画に書いても、それだけでは、誰が何に手をつければよいのかは決まらず、高い確率でそのまま忘れ去られます。

前回のコラムでは、重点課題の絞り方について取り上げました。選んだ課題を実行に移すには、具体的な施策と担当・期限を定めたアクションプランが必要です。その具体化の過程で、経営者はどのようなことを確かめればよいのでしょうか。

目次

重点課題ごとに、施策の選択肢を吟味する

重点課題が一つ決まっても、それを解決する手段は一つとは限りません。たとえば「売上を伸ばす」という課題なら、既存の顧客への提案を増やす、新しい顧客を開拓する、価格や商品を見直して単価を上げる、といった複数の道があります。ところが実際の検討では、普段から取り組んでいる方法や得意な方法が真っ先に挙がり、ほかの手段と比べないまま施策が決まることも少なくありません。

施策を考える際には、その課題を解決する手段を、いくつかの切り口から洗い出して比べることが役立ちます。既存顧客向けの案ばかりが並んでいるなら、新しい顧客に届ける余地はないかと問いを広げられます。販売数量を増やす案が中心なら、単価を上げる可能性も検討できます。どの切り口が役立つかは事業によって変わり、商品別や地域別に伸びしろを探る方が具体的な施策につながる場合もあるでしょう。

先ほどの製造業の会社では、人材の確保が重点課題の一つでした。これまでは求人サイトを中心に募集してきましたが、計画を詰める中で少し視野を広げて、就職フェアや大学の就職窓口への働きかけも手段の候補に加えています。新卒の採用や、学生の長期インターンを受け入れる案も話題に上りました。ただ、この会社は中途採用が中心で、新人を一から育てる体制はまだ整っていません。そこで当面は中途採用を中心に据え、新人の育成体制づくりは中期の課題として残すことにしました。

もちろん、洗い出した手段をすべて実行する必要はありません。課題の解決にどうつながるか、どの程度の効果を見込めるか、実行に何が必要かを比べて、取り組むものを選びます。見送った案も理由と一緒に残しておけば、状況が変わったときに検討し直しやすくなります。

同じ施策でも、どこまで、どのように取り組むかには選択の余地があります。別の会社では、品質管理の国際規格であるISO9001の認証取得も計画していました。主な目的は取引先へのアピールです。そのため、すべての業務を文書化するのではなく、受注から出荷までの主要な業務と主要な製品に絞り、専門のコンサルタントの力も借りて社内の負担を抑える進め方を選んでいます。

当社のご支援でも、経営者や幹部の方のお話を伺いながら、どのような切り口で手段を洗い出すと比べやすいかを一緒に検討します。挙がった案が特定の方法に偏っていないかを確かめることも、その過程で大切にしている点です。

施策に必要な仕事を分け、担当と期限を決める

施策が決まったら、実施に必要な仕事を洗い出します。「採用サイトを充実させる」のように施策の名前のままでは、担当者を置いても、どこから手をつけ、どこまでやれば済んだことになるのかが分かりません。

分け方の目安は、担当者が受け持つ範囲と、終わったかどうかが分かる単位です。案を作る、関係者と調整する、承認を得る、試す、運用を始める、といった途中の仕事にも目を向けると、必要な期間や協力してもらう人が見えてきます。なお、Webサイトの更新のように終わりのない仕事は、期限の代わりに、誰がどのくらいの頻度で手を入れるかを決めておくと扱いやすくなります。

冒頭の会社では、採用に向けた発信を強めるにあたり、まず現状を調べることから始める計画にしました。求職者が自社の採用サイトにどこから訪れ、どのページを見て、どれだけが応募に至っているかを確かめる。その結果をもとに対策を考えて年内に計画をまとめ、翌年から実施して、求職者が知りたい情報をWebに反映していく、という流れです。

この計画では、担当者を最初から決めていません。専任を置くか、複数人で分担するかは、分析が終わった段階で決めることにしています。仕事の中身が見えれば必要な作業量が分かりますし、応募者の個人情報を扱うなら、専任の方が望ましいという判断もありえます。仕事を分けておくと、担当を決める時期そのものを計画に組み込むこともできます。

そのうえで、施策全体の進み具合を取りまとめる責任者と、個々の仕事の担当者を決めます。費用を使う判断や他部門との調整など、担当者だけでは決められないこともあるため、どこまでを任せ、どこから経営者が関わるかも本人と話し合っておきたいところです。この段階で確認できていれば、着手したあとに判断待ちで仕事が止まる場面を減らせます。

担当者の業務量と、仕事を進める順序を確認する

仕事と担当が見えてきたら、必要な期間を見積もって日程を組みます。作業そのものの時間に加えて、承認や他の人からの回答を待つ時間、試した結果を直す時間も見込んでおく必要があります。

そのうえで、複数の施策を並べて確かめます。施策ごとの日程には無理がなくても、同じ担当者に仕事が重なり、日常業務と合わせると使える時間を超えてしまうことがあります。また、ある仕事が終わらないと次の仕事に着手できない、という前後関係が施策をまたいで生じることもあります。

ある会社では、開発を担うチームを新たに立ち上げる計画があり、社内から2名を選んで異動させる予定でした。ところが、2人が抜けたあとの現場を支える人材を先に採用しなければ、人選や異動は進められません。受注が多く現場が忙しい時期でもあり、まずは採用を最優先で進め、異動はその後に位置付けることになりました。

この例では、「新しいチームをつくる」という施策の進み具合が、別の施策である採用に左右されていたことになります。施策ごと・部署ごとに計画を立てていると、こうしたつながりは見落としやすいものです。どの仕事が終わっていれば次に着手できるのかを確認して日程を組むと、手待ちや準備の遅れを避けやすくなります。

もちろん、数年先まで同じ細かさで決められるわけではありません。直近の仕事は着手できるところまで具体化し、先の取り組みは主な節目と、準備を始める時期を押さえておく。調査や試行が必要なら、その結果を受けて何を判断するかを決めておくとよいでしょう。

担当者を確保できない、あるいは作業時間が足りない場合は、対象を絞る、外部に依頼する、ほかの施策の時期をずらすといった調整が必要になります。その結果、目標の達成時期が変わることもあります。アクションプランを具体化する過程では、当初の構想を見直す経営判断も含まれる場合があるのです。

冒頭の会社では、社長がすでに作っていたカレンダー形式の管理表を活かし、施策ごとの仕事・担当・期限まで書き込んでいく形にしました。打ち合わせの最後に、決まったことと「誰が・いつまでに・何を」するかをその場で表に書き込んでから終える運用です。計画を具体化し、日々記録を取ることで、日々の打ち合わせでも、次に何を確認すればよいかが分かるようになるでしょう。

アクションプランを決定する

自社の重点課題について、次の点を確かめてみてください。

  • その課題を解決する手段をいくつか比べたうえで、選んだ理由と見送った理由を説明できるか
  • 施策が、終わったかどうか分かる仕事に分かれ、それぞれに担当と期限が決まっているか
  • 担当者の業務量が使える時間に収まり、前提となる仕事が次の仕事に間に合う日程になっているか

すべてにYesと言えなかった場合は、その重点課題について、施策の候補と必要な仕事を幹部や担当者と書き出してみてはいかがでしょうか。必要な人員や費用、効果が出る時期まで見えてくれば、数値計画との照らし合わせにも進めます。

当社では、ありたい姿の具体化から重点課題、アクションプラン、数値計画、運用開始までを一緒に進めています。進め方は、中期経営計画実装100日プログラムでご紹介しています。

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専門家インタビュー(外部サイト)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

著者プロフィール

トラスタライズ総研株式会社
代表取締役 池尻直人

中小企業の「社外経営企画室」として、経営者の構想を経営計画・数字・組織・仕組みに落とし込み、実行と成果につなげる支援を行う。株式会社ブリヂストンで約16年間、商品企画・マーケティング・品質・環境・経営戦略・新規事業などを経験。独立後は中小企業を中心に50社以上の経営支援に携わってきた。中小企業診断士、米国公認会計士(ワシントン州)

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